(書評)あしたはれたら死のう

著者:太田紫織



橋から飛び降りての自殺未遂の結果、自らの記憶と感情、感覚の一部を失った少女・遠子。そして、一緒に飛び降りた同級生・志信は亡くなった。なぜ、自分は死のうと思ったのか? SNSに残された記録から、その手がかりを探す遠子だったが……
この作品はシリーズというよりも多分、読み切り作品だろうな。それはそれとして、なかなか複雑な設定にされている作品だなぁ……
なぜ自分は死を選ぼうと思ったのか? 記憶を失ったため、その理由を探る。それだけならばそこまでおかしいわけではないのだけど、主人公・遠子の場合、かうての自分がどうだったのか、というのもよく覚えていない。学校でどのような存在だったのか? 一緒に死んだ志信との関係は? 一切がわからず、また、自らの振る舞いについて、家族ですら「変わってしまった」と狼狽える。自分はどういう存在だったのか、から調べなければならないのだから……
そして、そんな自分自身は、というと、現在、学校では浮いた存在。勿論、それは自殺未遂をし、同級生を亡くしたということもある。しかし、それとは別にかつての遠子の立ち位置もある。そう、自殺騒動を起こす前の遠子は、クラスの女王的な立場であり、しかも、他者に心を許す存在でもなかった。そのことが、クラスでの存在を今度は真逆に……。なんか、読んでいてこの辺りの展開って、『奇跡の人』(真保裕一著)を思い出した。自分の存在を探す、しかし、その自分は嫌な奴で……
ただ、主人公が勝手な奴、という印象だった『奇跡の人』とは異なり、本作の場合、その背後にある遠子の、そして、志信の背後が明らかになっていく……
「変わってしまった」と戸惑う親。そのなかで、ヒステリックに自分を束縛しようとする母。家に帰ってこない父。その父は、議員秘書をし、その中で逮捕された、という経験もある。そのなかで、自分を大事にするように見せて、自分勝手にしか思えない母親。一方、母子家庭で育った志信。唯一の趣味といえるのが紙飛行機作り。しかし、死の少し前に何かトラブルがあって……。こちらはこちらで、人に言えない秘密。そして、やはり割り切れない思い、というのが横たわっている。
「そんなことで?」といえば、そういう感じもするかもしれない。ある意味では、本人の努力不足もあるかもしれない。でも、子供にとって、その世界が全てになってしまう、というのも間違いない事実。そんな状況を詰め込んだ。そんな感じがする。

No.4279


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