(書評)終わりなき道

著者:ジョン・ハート
翻訳:東野さやか



少女監禁班を拷問の上に射殺した。疑惑の中心となり激しい批判に晒される女性刑事・エリザベス。事件について、ある秘密を抱える彼女について州警察が動き出す中、一人の男が13年の刑期を終えて出所する。その男・エイドリアンは、警察官時代、数々の手柄を挙げた実績の持ち主だが、一人の女性を殺害したとして逮捕されていた。しかし、エリザベスは、エイドリアンの潔白を信じていて……
丁度、5年ぶりに読んだ著者の本。まず何よりも言えるのは、「これでもか!」とばかりに詰め込んできたなぁ、という感じ。
物語の基本線は、2つ。エリザベス自身がその当事者となっている監禁犯射殺事件。そして、もう一つが、13年前、エイドリアンが起こした、とされる事件の真相について。基本的に優秀な刑事であるが、しかし、過去の出来事から性犯罪などの被害者に対しては、異常なくらいに感情移入し、暴走するエリザベス。そして、そんなエリザベスに、これまたべったりとついていく被害者の少女チャイニング。二人が抱えている秘密とは? 一方、優秀な刑事であったエイドリアンが起こした事件。しかし、本当に彼が事件を? しかも、エイドリアンの出所と時と同じくして再び事件が起こり始めて……
とにかく、主人公のエリザベス。出所した元刑事のエイドリアン。エリザベスの相棒であるベケット。エイドリアンを収監していた刑務所の関係者。監禁の被害者チャニング……全員が全員、何らかの秘密を抱え、その秘密の薄皮が1枚、また1枚と?がされていくような展開が印象的。欲望、信念、義理、腐れ縁……動機は様々なれど、その秘密を抱え、その秘密こそが法律、社会正義よりも優先されることによって物語が複雑化していく様が印象的。ある意味じゃ、そんな複雑な事情を抱えた連中ばかり集まるかよ! っていうのは思うところだけど、それを言うのは野暮ってものだろう。
まぁ、正直なところ、基本線の2つの結びつきはやや弱い感じはする。ただ、連続殺人の真相と、エリザベスの過去の話については、個人的にはかなり読みごたえを感じた。
この感想を書く前に、WEB上での感想を見ていると、「動機が納得できない」というものがある。ある意味、日本では……という部分があるのかも知れない。私だって、あくまでも「理屈として」理解した、というレベルなのは間違いない。ただ、それでもニセ科学に関する議論とか、そういう人たちがいる、というのを理解していたから。そして、その思想がどうしようもないすれ違いを作り出すこともあるのだろう……ということも……。どこまでエリザベスの心情に迫れたのかはわからないが、理屈としては理解できた。
ポケットミステリで580頁あまり。かなりボリュームのある作品ではあるのだけど、それだけの読みごたえはある。

No.4284


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