(書評)勇者のセガレ

著者:和ケ原聡司



「父さんな、異世界に行って、勇者になろうと思うんだ」 異世界から現れた金髪少女・ディアナは、その世界、アンテ・ランデで復活した魔王を倒す勇者として、父を召喚したいという。何と、父(と母)は、若いころ、その異世界を魔王の手から救った勇者なのだという。父が勇者だと信じられないし、そもそも仕事を辞めて、なんて……
庶民派勇者モノ。まぁ、この辺りは、『はたらく魔王さま!』とも共通している。
最近、WEB連載されていた作品などを中心に、普通の主人公が異世界に行って、そこで勇者になって……みたいな作品が多くある。その是非はともかくとして、ある意味では、今の実社会ではただの凡人である自分が英雄になれる……みたいなものにあこがれる気持ち、というのはわかる気がする。
では、そんな存在が身近にいたら? そんなテーマがあるのかな? などと感じた。
サラリーマンの父と、専業主婦の母、妹という4人家族に暮らす高校生・康雄。高校3年になり、何となく塾通いをし、どこかの大学には入れれば、という日々。中学時代から合唱が好きで、高校でも入ったけれども、部員不足で廃部。それが余計に、何となくの日々につながって……。そんなときに知った父の過去……
サラリーマンって何をしているの? 考えてみると、自分も自分の親が会社でどんな仕事をしているのかよくわからないっていうのはわかる。ただ、ごくごく平凡な存在だとしか思えない。でも、実際にその仕事の様子を知ると……ある意味、「お父さんの職場見学」みたいな話でも、作品は作れそう。でも、この作品の場合、異世界の勇者だった、という文字通り、とんでもない「主人公」であったことを知る。しかも、時折、現れる亡霊・シィとの戦いで、両親の「実力」を知ると本当のことと実感せざるを得ない。そうすると、ますます劣等感を感じざるを得ない。希望にあふれての高校生、ではなく、自分は何をしているんだろう、という学生時代の思いとか、そういうのを思い出した。勿論、そんな中で魔法熟女になる母とか、ギャグはギャグで面白かったのだけど。
そして、そんなときに出会った中学時代の同級生・帯刀翔子。彼女によって、合唱に熱を入れていた時代を思い出して……での、復活としっかりと話がまとまっているのは評価したい。
ただ……この作品、続くの? 魔王復活に関する部分、さらに、帯刀翔子の周辺に暗雲が……みたいなところで続編への伏線が張られているのは確か。ただ、正直なところ、今回の騒動で主人公が……というのを決めたので、先に書いたテーマの部分はほぼ終了。そうすると、あとは、普通の冒険ものになってしまいそうな気が……。最近の『はたらく魔王さま!』シリーズが全く働いていないように、「ここが売り」だった部分がなくなりそうな気がしてならないだけに。

No.4285


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