(書評)国芳猫草子 おひなとおこま

著者:森川楓子



人気浮世絵師・歌川国芳の絵に惚れ込み、国芳の弟子にしてもらった大店の娘・おひな。しかし、絵は全く上達せず、国芳の娘の世話に奔走する日々。そんなある日、何者かに襲われ、怪我を負った上に国芳の娘を誘拐されてしまう。そんなとき、謎の薬師にもらった薬を飲んだおひなは、猫の言葉を理解できるようになってしまって……
山東京山の『朧月猫の草子』を下敷きにした作品……らしい。元ネタはよく知らないのだけど。
国芳の娘の誘拐事件。さらに、その娘がかくまわれていた屋敷で起きた化け猫騒動による殺人事件。その真相を、というミステリー形式をとっている。……とっているのだけど、猫と話をすることができ、その猫のネットワークによってあっさりと情報が手に入るのでそれほど調査という感じではない。しかも、トリックとかは、かなり王道のものなので予測することが可能。その辺りを期待すると肩透かしを感じるんじゃないだろうか?
ただ……その中での主人公・おひな、そして、もう一匹の主役級キャラである猫・おこまのキャラクターがかわいい。
一生懸命、国芳の娘の行方を捜し、そして、その際に知った屋敷へ行くというおこまのことを心配する。そんなときも、頼りにするのは猫のネットワーク。猫たちの伝える思わぬ本音に驚き、そして、その猫のために鰹節を常にもちあるく。絵は下手というけど、そのバイタリティと、猫とのやり取りが何ともほほえましかった。一方のおこま。美人猫といわれ、お屋敷へと旅立つのだけど、決して国芳の家でのことを忘れたわけでもない。ただ、お嬢様として贅沢な生活をしてみたかっただけ……。ちょっと気取っているけど、でも、決して嫌味ではないおこまも私は好き。こういう猫、いいよな~(笑)
著者は別名義でジュニア小説とかを書いているらしいのだけれども、本作のキャラクターの活き活きさ、とか、その辺りは、別名義での執筆の経験からきているのだろうな、と感じる(と書いて、著者のデビュー作(森川楓子名義のね)の感想をみたら、そこでも同じようなことを書いていた(笑))
ただ……個人的にちょっと引っかかったのは、事件が解決した後の部分。事件は解決して一段落。そのうえで、薬、自らの症状について……
薬の影響というのを知って、いきなり猫たちに対する態度を変えて、って……それはさすがに急すぎないか? 薬についての真相でショックを受けるのはわかるが、別に猫たちが悪いわけではないし、それをしてもなぁ……。ちょっと行動が極端に走りすぎていて、その部分には違和感を覚えた。ここはもうちょっと分量をかけて欲しかったかな? と。最後のまとめ方も急だったし。
と、最後のまとめ方がちょっと残念な感じはしたのだけど、生き生きとしたキャラクターの魅力は十二分に感じられ、楽しかった。

No.4286


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