(書評)ヒポクラテスの憂鬱

著者:中山七里



コンサート中、アイドルがステージから転落して死亡した。ライブ中の事故死。そのように判断されたのだが、ネット上の掲示板には「コレクター」を名乗る者から、アイドルの死は事件であることが示唆されて……(『堕ちる』)
など、浦和医大の法医学者・光崎の活躍を描いた連作短編集第2弾。
一応、登場人物は基本的に同じなのだけど、前作と結構、カラーが異なっている印象。前作は、予算であったり、被害者の理解であったり、はたまた、検視官との対立であったり……と、解剖をするまでのアレコレが強く出ていた。しかし、今回は、「コレクター」なる存在が、関係者しか知らない情報を持っていたりすることもあり、かなりスンナリと解剖へと持ち込まれる。そのうえで、一見、ただの事故などと思われる事件がどう違っていたのか、というところに主眼が置かれている。
例えば、冒頭に書いた1編目。ステージから転落死したアイドル。激しい損傷はあるが、損傷個所などについて不自然な点は見られない。敢えて言えば、なぜか頭を守ろうとする気配が見えなかったことだが、しかし、極端におかしいとも思えない。しかし、解剖で出たのは、それとはまったく違う部分での意外な事実……。まさに瓢箪から駒という感じの話なのだけど、意外性はたっぷり。
そういう意味では、2編目の『熱中せる』も。熱中症で死亡した赤ん坊。しかし、その通報には不自然な点があり、調べると親は直前にパチンコ屋におり、その駐車場に……。しかし、解剖で発見されたのは……? 解剖に至るまで、というか、解剖以前にも様々な情報があふれており、事件の流れが見えていたのが、解剖によって全く違う真相へ至る話の流れが面白い。
で、そのような話の中心にいる「コレクター」とは? コレクターの書き込みによってどんどん増加する解剖。その中には、当初の見立て通りのものもあるし、そうではないものがある。そして、その真意が明らかになったのは……
こういうと何だけど、エラく遠大な計画だな(笑) 作中、このタイミングになったのは、コレクターにとって計画外だったはずだけど、下手すればもっと早い段階で、となっていた可能性だってあるはずだし、逆にもっと最悪の形で、ってことだってあるはず。ちょっと無理があるような気がしたのは残念。ただ、コレクター関連以外のところは面白かった。

No.4287


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