(書評)この世で最後のデートをきみと

著者:坊木椎哉



50万円と引き換えに、二人きりの時間と、その人が最も望む形の最期を与える、という仕事をしている少女・夜見川麻耶。自らの傷を隠しつつ、死にゆく人々に愛を振りまく彼女は、同じく大きな宿業を背負った青年と出会い……
先日読んだ『きみといたい、朽ち果てるまで』と同時に刊行された著者のデビュー作の片割れ。こちらは集英社刊。
読んでいてまず思ったのが、『きみといたい~』と共通点が多いな、ということだったりする。『きみといたい~』と違い、麻耶が生活している場所は現実社会に近いもの。しかし、その中で主人公がやっているのは、繁華街でビラを配って、死を望む存在と会い死を与えること。ある意味、一時期話題になったJK散歩的な仕事。しかも、自宅では、やはり人でなしの母親がおり、その母親に稼いだ金を渡している。ある意味、底辺の生活の中で傷ついて、という日々を送っているなんていう辺りは非常に似ている。
そして、話の流れも似ているなぁ、と感じる。連作短編形式なのかな? と思ったのだけど、そうではない。第1章で日常の業務が描かれ、その後は、日々の様子を描きながらだんだんとその人間関係が変化していき……という形でつづられる。そういう意味では、著者がこういう作品、作風を描くのが好き、というパターンが感じられた。
その中で、自分が印象に残ったのは麻耶の人間性かな? 『きみといたい~』の晴史は、底辺の生活で、ウンザリとしながらもある意味、自分の状況を把握し、その中で這い上がろうとするという生活。その象徴が、シズクという少女とのちょっとした会話。対して、本作の麻耶は、その生活を嫌っている、というわけではない。決して楽しんでいるわけではないのだろうが、じゃあ、這い上がろうとしているのか? というとそういうわけではない。そして、その中で彼女が求めるものは……。歪んだ人間関係の中にあり、しかし、その歪んでいても、人間関係を求めてしまう、言い方は悪いけどナチュラルにくるっている様がどうしても印象に残る。
そして、そんな彼女に殺してほしいといいつつ、金がないのでその彼女の仕事を手伝う青年・宮垣。正義感を表に出しつつも、しかし、どこかズレており、人を殺すこと、死に至らしめることに躊躇しない。そんな宮垣と麻耶のどこかズレたやりとりの末……
話の結末でいうなら、その最後の流れを通して一歩踏み出した『きみといたい~』の晴史とは違い、こちらは麻耶が大きく変わったのか? というと……。ただ、それでも、麻耶がやっていることに意味があった。少なくとも救われている人がいる。それをしっかりと伝えられた、というのは大きな意味があるのかもしれない……

No.4290


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