(書評)シャルロットの憂鬱

著者:近藤史恵



「なあ真澄、犬を飼わないか? 子供はもうなるようにまかせればいいじゃないか」 不妊治療に失敗し落ち込む私に、夫の浩輔はそう提案した。そんなとき、叔父が勧めてきたのは、引退した警察犬・シャルロット。当初は迷いつつも一目ぼれしたシャルロットを迎えることにして……
ということで、シャルロットとの生活の中で起こる出来事を描いた連作短編集。全6編を収録。
三つの名を持つ犬』『さいごの毛布』など、著者の作品って犬を題材にした作品をいくつか描いている。ただ、先の2つは、どちらかというと、人間側の都合に振り回される犬という感じだったのに対し、本当に犬を大事に思っている夫婦の日常の中で遭遇する事件を描く形になっている。
ブログのプロフィール欄やツイッターのアイコンの写真に使っていることでわかると思うのだけど、私は犬派か猫派か、で言えば完全に猫派。猫の場合、放っておいても勝手に遊んでるので、毎日、十分な散歩をさせないといけないなんて大変だな、とどうしても思う。でも、それを通じて、人間関係が広がる、とか、そういうのは散歩をさせるから、というのはわかる。でも、そんな中でのトラブルも……
そんな愛犬・シャルロットとの出会いを描いた1編目の表題作。元警察犬ということもあり非常に賢いシャルロット。普段、吠えたりすることもなく、指示にはしっかりと従う。吠えるのは、犯罪などの様子を感じたときのみ。ところが、家に入ったとき、シャルロットは反応を示さなかった。それは? ……理由自体も面白いのだけど、何よりも犬も、それぞれに性格とか好みとかそういうのが全く違う、っていうのをうまく描いているな、と感じる。この辺、猫も全く同じで「そうそう!」と納得。
著者の描く、人間の暗い面を感じるのが、『シャルロットとボーイフレンド』。散歩がてら通うようになったドッグランで会う人々。その中で、妻の外出時に、自分が散歩を担当している、という男性。しかし……。ハッキリ言って、そこで描かれるのはある種の狂気。先に挙げた作品のように、人間に利用される、というのを描いた話ともいえる、それだけをとるとかなり嫌な感じなのだけど、シャルロットの可愛さなどで相殺されているバランスの良さを感じる。
動物を飼っている。そのことでのいろいろな騒動という意味では、『シャルロットと猫の集会』。散歩コースで猫の集会に出会った真澄たち。以前は、猫が集まるのは、別の場所だったのに、今はそれなりに車なども走る場所になっていた。それが原因で、猫嫌いの人からは苦情も来て……。
先に述べたように、私は猫が好きだけど、猫が嫌いな人もいる(勿論、犬が嫌いな人もいる) そして、その動物の行動を迷惑に思う人もいるし、逆に好ましく思う人もいる。その中で、どう折り合いをつけるのか? 結構、難しいテーマをさりげなく取り入れたエピソードだな、というのを強く感じる。
と、重いテーマも内包しているのだけど、真澄と浩輔の夫婦。そして、シャルロットのかわいらしさ。それを用いることで、軽い気持ちで読むことができる。そんな作品集になっており、楽しく読むことができた。
ただ、私は言いたい。
近藤さん! 猫の可愛さを描いた作品も書いて!(すっげー無茶ぶり)

No.4292


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