(書評)リンドウにさよならを

著者:三田千恵



想い人である襟仁遥人と共に飛び降りた結果、地縛霊として学校に縛り付けられている神田幸久。そんな彼は、クラスからイジメを受けている少女・穂積美咲にその存在を気づかれ、友達となる。一緒に過ごすうち、美咲の愛らしさを知った幸久は、彼女にイメチェンを勧めて……
第18回えんため大賞ファミ通文庫部門優秀賞受賞作。
Twitterなどを見ているとやたらと宣伝がされている作品。
なんていうか、読んでいてまず思ったのが、作中でのイジメ描写がかなり生々しいな、ということ。周囲から、「ミサ菌」と蔑まれる美咲。しかし、一緒の時を過ごす中、幸久が感じるのは彼女の強さ。だからこそ、イメチェンを勧め、さらに勉強の面倒を見て……。でも、それはそれで、次なる彼女に対する攻撃の材料にされてしまう。なんていうか、一度、作られてしまったイジメって、攻撃すること自体が目的化してしまっているから変えたら変えたで、攻撃の理由が作られるというどうしようもない状況が続く。そのどうしようもなさ、っていうのがリアルに描かれていると感じる。
その上で、その相談に乗る幸久。美咲とのやりとりをするのだが、そこで思い浮かぶのが、共に飛び降りた遥人のこと。目の前の美咲が、何となく遥人に思えて仕方がない……。そして、彼女との思い出が浮かんでくる。彼女もまた、イジメにあっていた、ということも併せて……。そして、遥人をかばって死んだ、ということに満足し、未練などないはずの幸久がなぜか、地縛霊として存在している理由は何なのか?
まぁ、なぜ満足しているはずなのに? っていうところについては、ちょっと勘が良い人ならば予測できるんじゃないかと思う。自分にも思いついたし。また、イジメの真相。実は、の、登場人物の相関図。こういうと何だけど、シンプルな話をものすごく複雑に描いたような気がしてならない部分もある(いくら何でも全く気付かない、とか、そういうことがあるのかな? と思うところとかもあるし) 細かいところで気になった個所がないわけではない。
でも、美咲のこと。幸久のこと。遥人のこと……
様々な枝葉を用いながら、それらをしっかりとまとめ上げた結末。これは素直に評価されるべきところじゃないかと思う。面白かった。

No.4293


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