(書評)豊作出来! 異世界農場へようこそ

著者:ゆうきりん



「草食」が卑しいものとされている世界。そんな中で、疫病などにより、狩りをできる若い男を失ったモウノ村は危機に陥っていた。いよいよ「草食」を受け入れざるを得ない。そんなとき、竜の呪いにより、狩りの力を失った冒険者アレイは、救世主として異世界の男・アズマを召喚し、「草食」生活のやり方を伝授してもらうことを提案する……
なんていうか……本当に農業と料理だけをしている作品だった。
あとがきで著者が書いているけど、異世界転移系作品の一つであることは間違いなし。ただ、「なろう」系とかであるような、アズマが異世界に移住して、というタイプの話ではない。あくまでも、アレイが召喚したアズマは数時間だけ、アレイたちの村へと現れ、その間に農業のやり方、また、植物の料理方法を指導して去っていく。ただし、その異世界へ現代社会の道具とか、調味料とかそういうものを持ち込むことができる(ただし、アズマは生態系とかを守るために、それをそのまま異世界に置くのではなく、あくまでも「見本」として見せ、同じような植物を探して育てる。同じような道具を現地調達で作らせる、ということしている)
とりあえず、読んでいると腹が減る。これは間違いない。
握り飯から始まって、手作りパン、それを使ったサンドイッチ、さらには鶏がらスープでのラーメン……。アズマが、何でそんなことまで知っているの? というくらい、料理に精通して、その作り方を懇切丁寧に描くこともあって空腹感を覚えた。勿論、その一方で、農業指導というか、時代的には、まだ現代の機械による農業ができる以前、つまり、江戸時代とかそのくらいの農業をする辺りも結構、丁寧に描かれている。その辺、結構、取材してきたんじゃないかな、と思う。
……ただ、本当にそれだけが描かれた作品というか……
というのは、この作品、一応、異世界らしくて現代の地球にはいないような化け物(?)的存在がいるらしいけど、それが表に出るわけではない。宗教的な価値観などもあり、「草食」が禁忌となっている。そして、そのことがバレそうになることがあるのだけど、囲いとかを外したら回避でそこまで危機感もない。しかも、世界観などについての説明もよく言えば大胆に、悪く言えば全く触れることなく終わる。最後にアズマ自身についても……。そういう意味では、ものすごく投げっぱなし、とも言える。都合よく、村の近くに、現代の野菜と同じような植物が生えている、とか、そういうのもご都合主義と言われる可能性があるだろうし……
飯がうまそう。これは確かなのだけど、世界観とか、そういうのがよくわからないままに終わったな、というのもどうしても思う。

No.4295


にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0