(書評)雪桜 牧之瀬准教授の江戸ミステリ

著者:福田栄一



前任者の急病により、刑事課に転属されたものの、前任者が放置していた2年前の殺人事件の資料整理ばかりをさせられている寺師真衣。しかし、資料の整理中、偶然にも被害者がある古文書のコピーを隠し持っていたことを発見する。何が書かれているのかもわからない真衣は、29歳にして大学准教授に抜擢された若き研究者・牧之瀬に助言を求めることとなって……
久々によむ著者の作品。読みながらまず思ってのは、すごくテンポが良いな、ということ。
2年前に発生したものの、事実上、迷宮入りしてしまった世田谷での資産家殺人事件。当初、金目当ての事件と思われたものの、手がかりは少なく、しかも、本当に金銭的価値のあるものは盗まれていなかった。そして、そのまま……。そんな中、真衣が発見したのは、被害者の撮った写真の裏に隠されていた古文書のコピー。そして、そこに書かれていたのは……?
正直なところ、真衣じゃないけど、かなり細い糸をたどっている話ではある。でも、現代に起こった殺人事件のヒントと思しきは古文書だけ。しかも、その古文書に記されているのは天保年間に起きたという生首事件。真衣と牧之瀬が、その古文書に書かれた生首事件の現場をたどっていく。それは、同時に、被害者の足取りを追う、ということもであって……。作中作ともいうべき、生首事件が魅力的で、横道にそれている感じがするけど、それが気にならないのは素晴らしい。
まぁ、一晩経つと、牧之瀬が、古文書に書かれている事件の現場を探り当てている。そして、その現場をたどると、新たなヒントが手に入って……。味方によっては「うまく行き過ぎ」という見方もできるかもしれないけど、テンポの良さにつながっている、とみるべきものなんだろうな。しかも、徹夜とかは平気だけど、限界を迎えるとどこでも眠り込んでしまう牧之瀬。独断に捜査を行う真衣というキャラクターが立っているのも、そのテンポの良さに寄与していると思う。
まぁ、個人的な好みとしては、もうちょっと生首事件と目の前の事件のリンクとかがあってもよかったかな? とは思うものの、最後までテンポよく物語を読ませるリーダビリティの高さは特筆ものだと思う。
これ、続編もある……のかな?

No.4296


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