(書評)幸せのコイン

著者:鯨統一郎



会社を継がせようとする父に反発し、花屋になるという夢のために飛び出した奈緒。けれども、直後に父は死亡し、残された遺産は煤けた500円玉一枚。そんな中で、会社の状況を知って……(『涙のマントルピース』)
から、はじまって1枚の500円玉が紡ぐ連作短編集。
著者というと、歴史ネタを中心に色々なタイプの作品を書いている作家。そして、どちらかというとギャグっぽいネタが多いのだけど、本作はギャグ要素は控えて非常に「奇麗な話」を描いてきた、という印象。とりあえず、好きなエピソードをいくつか……
英語の苦手なちあきが、英語のテストで2回連続で満点を取った。しかし、そんなとき、担当の教師は誰かが問題を盗み見たらしいと示唆する。ちあきは一転、疑惑の目で見られてしまうのだが……という『エニシダの誓い』。ちあき自身は、カンニングはしていないけど、でも、本人が「満点を取る方法がある」と言うことで何か秘密があるのは明らか。そこで明かされる理由。自分が学生だったころは気づかないけど、考えてみれば学生の期間は短い。そんな時間の短さ、そして、疑惑がありながらも、彼女を信じてくれた友達との友情が良かった。
離婚届を入れたカバンが置き引きにあってしまった。離婚を決意していた二人は、仕方なく、交番へ向かう。その途中で見るのは、まだ幸せだったころの街並み
そこでの日々……(『ハシバミ色の瞳』) うまく行き過ぎっちゃあそうなのだけど、ちょっとしたすれ違いからの離婚へ。それが、ちょっとしたきっかけで、それまでの出来事を振り返って……というのは最低限の整合性は保っており、こういうこともあるかも、と思えるのが良かった。
まぁ、基本的に会話劇メインなので、ページを開くとかなり白いし、全体的にアッサリ目なのは事実。最後の編でつながるのだけど、そこはかなり強引。コインそのものがつなぐ、と言っても、それが降伏を呼び込むのかどうかもよくわからない。そういうのを突き詰めていくとガッツリと読みたい、っていうのには向かない作品だとは思う。
ただ、逆に言うのならば、重~い話とか、そういうのを読んだ後に、ちょっと息抜きで軽い話を。そんなときに読むにはピッタリなんじゃないかろうかと思う。

No.4303


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