(書評)黒涙

著者:月村了衛



黒社会とつながる黒色分子である捜査4課の刑事・沢渡は、堪能な中国語を見込まれ、公安の対中防諜特別チームへ抜擢される。沢渡と義兄弟の契りを結ぶ、黒社会「義水盟」の幹部・沈は、インドネシア人実業家のラウタンを巻き込んで、沢渡のチームに協力をすることになるが……
『黒警』の続編となる作品。
確か、前作は、前半が沢渡の倦んだ日々で、公判が波多野の復讐のために動く話、で2パートというような印象だった。で、実は、本作も前後半というか、7割くらいまでと、そこからの3割くらいの印象がガラッと変わった。
冒頭に書いたように、沢渡が対中防諜特別チームへと抜擢される。そして、沢渡と沈は、インドネシア人実業家のラウタンをまきこんで作戦を決行することにする。そのラウタン。若く、そして、格好良く、男から見ても惚れ惚れするような好青年。しかも、沢渡達にも非常に協力的。ラウタンと波多野は全く違うのだが、しかし、沢渡、沈、ラウタンとのやりとりは、波多野が元気であったころが思い出されてならない。だが、ラウタンは、大物スパイと言われる美女・シンシアと出会い関係を重ねていって……
本当、物語が始まって7割くらいまでは主人公はラウタンのように思える。沢渡と同じく、精力的なラウタンの行動は非常に魅力的。しかし、シンシアと関係を持ち、沢渡達の要請を受け、より危険なところへと入り込んでいこうとする姿に危なっかしさも覚えて……そして……
特捜チームの中にいた裏切り者。その結果として起きた二つの悲劇……ここから一気に動き出す物語。自らが巻き込んだことによって起きてしまった最悪の結末に沢渡はどうケジメをつけるのか。その答えは……。どちらかというと、明るい雰囲気出来たからこそ、ラウタンが魅力的であったからこお、の、終盤の落とし方がキツい。途中まで、ほとんど沢渡の活躍はないのだけど、それも計算のうちなのだろう。
もっとも……他方に目を向けると、ラウタンの前に現れたシンシア。シンシアと繋がっている敵の幹部である莫。こういった面々については引っ張った割になんか中途半端に退場してしまうなど、何か引っ張った割に肩透かしなところもある。そういう意味での不満があったのも確か。
ただ、それでもラウタンの魅力。その喪失感で落とす、という話に吸引されたのは間違いない。

No.4310

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