(書評)組織犯罪対策課 白鷹雨音

著者:梶永正史



井の頭公園のベンチで、ピエロ姿の男性の遺体が発見された。死因は、テトロドキシンによる中毒死であり、発見される直前まで息が合ったものと考えられる。そして、その「1/TTX」という記号が……。独特の発想で事件を見る刑事・白鷹雨音はかつての恋人である刑事・草野とのコンビで事件を追うことになるが……
「このミス」大賞を受賞した『特命指揮官』から始まる郷間彩香シリーズとは違う、初の作品。
こういうと何だけど、もうちょっとボリュームがあってもよかったかも、というのをまず思った。というのも、36文字×16行で、230頁ほどとかなり分量が少ないため。後に書くが、それ故の欠点を感じた。そもそも、「組織犯罪対策課」、つまり、「〇暴」班ってことになっているけど、冒頭、違法薬物の売人を逮捕するシーンがあるほかは、組織犯罪とか関係なく、普通の殺人事件の捜査だし。
ただ、その事件自体はかなり魅力的。
テトロドキシン、つまりフグ毒による殺人。犯人は、被害者を改造スタンガンを使って拉致し、そこで服毒させ、まだ生きている状態で放置したらしい。ピエロ姿の男の場合、白昼堂々、同じくピエロの姿で、ピエロのパフォーマンスに見えるように装って。そして、第2の事件では、瀕死の状態の被害者を車いすに乗せ、堂々とゲートをくぐって動物園に運んで……。一見、ゲーム、愉快犯のように思える犯人の狙いは何なのか? そして、一見、つながりがなさそうな被害者の関係性は? この辺りの謎の提示が非常に魅力的であった。正直、事件の背景のテーマみたいなものは、大昔から言われている「現代社会の闇」みたいなものなのだけど、それを魅力的に演出してみせたのは見事の一言だろう。
ただ、先に書いたように、もうちょっとボリュームがあってもよかった。
というのは、230頁という分量の中で連続殺人の捜査、だけでなく、元恋人である草野との関係性、はたまた、現在、やたらと雨音を慕ってくる部下・兎束とのやりとりなどを入れているため。主人公の雨音は、独自視点で、普通とは違った思考で事件の真相に迫る、つまり柔軟な思考と直観力に優れた人物とは説明されえている。でも、これだけ詰め込んでいるため、ほとんど、神がかり的なものになってしまっていると感じられる。もうちょっとボリュームを増やして、試行錯誤とか、そういうのを入れてくれた方が楽しめたかな? と思えてならない。まぁ、これは当初の企画とか、そういうものがあるんだろうけど。
一応いうと、面白かったのは確か。だからこそ、を求めたくなってくる、というわけ。

No.4311


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