(書評)雨色の仔羊 警視庁捜査一課十一係

著者:麻見和史



赤羽で発見されたSOSと血で書かれたタオル。誰の手によるものか捜査を開始した如月塔子と鷹野だったが、発見したのは監禁され、すでに事切れた男性の遺体。そして、そのタオルを運んだのは小学生くらいの少年。まもなく、その少年・大橋優太を保護することに成功するが、年の割に大人びた彼は、事件についてかたくなに口を閉ざしていて……
シリーズ第8作。
今回の謎は、少年・優太は何を隠しているのか? というところかな?
冒頭に書いたように、SOSと書かれたタオルから、残虐な形で殺害された男性の遺体を発見。そのタオルを運んだのは小さな子供。そして、その子供・優太は何者かに監禁されていた形跡があり、警察はその保護に成功するが……。
優太と時を同じくして失踪した父親。母親は、3年前、キャンプ場で事故死し、優太自身も大怪我を負った、という過去がある。しかし、そんな事件はありつつも、SOSと残して死亡した男性との接点は見つからない。さらに、捜査を続ける塔子たちの前に公安の刑事・上條の姿もちらつく。そして、優太の父が強盗事件(?)を起こしたらしい、などという一報まで入り……
なぜ優太は口を閉ざすのか? 被害者との関係は? さらに父はなぜ強盗事件を? 公安は何を探しているのか? 父親をかばって、というのはわかるかもしれないが、しかし、では強盗事件をなぜ? 色々と事実は判明するものの、それが却ってチグハグさを感じさせる。全てのカギは優太だが……。この構成のさせ方にまず惹かれた。
そして、その優太を前にした塔子の成長した姿。頑なに口を閉ざす優太。しかし、塔子にだけは少し心を許す気配が。優太の目線、優太の立ち位置を考えて、その考え方に沿うような形で接する辺りは1作目あたりとは大きく違う印象。そして、その観点から、優太に一方的に「話せ」と迫る鷹野をやりこめたりとか、これまでの積み重ねがよくわかるシーンがあったのもよかった。この辺、シリーズを重ねているからこそ、だろう。
ただ、優太と父、優太を監禁した人物、さらに被害者……これらの関係性はしっかりとわかったものの、監禁犯の目的がイマイチ不明瞭で何とも言えない部分が残ったのも確か。かなりショボい犯人だ、ってことになるんだろうけど、主張とかそういうものが読書中に出てこなかったためどうにも……。塔子が直接かかわった事件、という意味ではそれでも良いのかもしれないけど……とは思うにしろ。
安定した面白さを保っているのは確か。
そして、この終わり方だと、次回は塔子の父を巡っての話、ってことになるのかな?

No.4313


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