(書評)きみがすべてを忘れる前に

著者:喜多南



霊感体質を持つ少年・結城クロは、ある日の放課後、同級生であった長谷川紫音の幽霊と出会う。幽霊となって残るのは、この世に未練があるから。紫音の心残りを聞き出そうとするクロだったが、紫音は取り合わず、かつてのようにクロを振り回していくのだが……
読書メーターの献本プレゼントでもらった本。元々は、「このライトノベルがすごい!」文庫から刊行された『僕と姉妹と幽霊の約束』を全面改稿したものとのこと。まぁ、だからと言ってそちらを読んでいないのだけど。
物語は基本的に、紫音が学校を彷徨う幽霊たちを発見し、その幽霊を成仏させるために、クロの姉妹たちの力などを借りながら奔走する、というもの。クロと同じく、紫音と一緒にいた親友・志郎らとの日常を過ごしながら、しかし、幽霊が見えることは秘密にしながら。焼却炉付近で何かを探し続けている女生徒の幽霊。部活の時間になると音楽室のピアノを前に佇む幽霊。開かずの生徒指導室の幽霊に、迷子の幽霊……。
粗筋を読むと、結構、暗いというか、寂寥感を伴った青春モノみたいに思えるのだろうけど、それぞれの幽霊の問題を解決するまでのやりとりについては、元々ライトノベルレーベルで書かれいたことに納得できるような感じで比較的、明るめに描かれている。特に、姉である緋色は……久々に見たよ、こういうツンデレ娘(笑) こういうと何だけど、結城家の面々の霊に関する能力がとびぬけて凄すぎて、かなり簡単に解決している、と感じるのも苦労して、という感覚が少ない理由なのかな? とは思う。
そして、その中で描かれる紫音の人物像。幼いころから、身体が弱く、生きることを諦めて暮らしていた紫音。故に、周囲からも孤立していた。そんな紫音にひたすらについてきた志郎。まるで姫を守る騎士のように、彼女に付き従った。そして、クロは高校で紫音らと出会い、紫音に惹かれた。志郎が紫音に惹かれていることを知りながら……。そして、紫音と最後に会ったとき、クロは告白したのだが……
ここから物語が一気に急展開するのだけど……うーん……
いや、実は! っていうひっくり返し自体は悪くない。ただ、ちょっと前に、似たようなひっくり返しの話を見ただけに何となく想像できてしまったのがもったいない。幽霊というのがどういう存在なのか? というような点についてしっかりと伏線を張るなど、準備がしっかりしていたのは好印象だっただけに。
もっとも、クロの言動とか、はたまた、裏表紙の紹介文とかについて、ちょっと矛盾があるんじゃないか? というのを感じるところもある。少なくとも、裏表紙のあらすじは書き直せよ……
面白くは読めたのだけど、ちょっと気になる個所も多かったな、という印象。

No.4320


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