(書評)小鳥を愛した容疑者

著者:大倉崇裕



銃撃を受けて負傷した捜査一課の警部補・須藤は、リハビリということもあって容疑者の飼っていた動物の管理をする警視庁総務部総務課動植物管理係に配属された。とはいえ、その仕事をする機会はほとんどない状態。そんなとき、同期のライバルである石松から、初めての仕事を渡される。須藤は、獣医資格を持っている新米巡査の薄圭子と共にその家へ向かうが……
警視庁いきもの係シリーズ第1作の連作短編集。一応、言っておくと、警視庁総務部総務課動植物管理係という部署はフィクション。
著者の作品というと、色々とマニアックな知識を詰め込んで、その知識などを元に謎を解く、というタイプの作品が多いように思うのだけど、本作もその系統という風に言えると思う。勿論、題材としては動物、それも犬や猫ではなくて、もっとマニアックなもの。
例えば1編目の表題作。事故で意識不明となっている容疑者が飼っていた小鳥たち。被害者は川に捨てられていたが、容疑者は白バイを振り切ろうとして事故を起こしてしまった。容疑者の腕にはひっかき傷があり、可能性は高そうだが被害者の爪には残っていなかった。その他、様々な状況証拠から心象はクロだが……という状況。
そんな中から、薄が発見したもの。容疑者が飼っていた十姉妹の中に、どうやら「手乗り」として育てられた存在が混じっているらしい。また、確かに小鳥を飼うためには防音は必要とは言え、必要以上に強力なものに感じられる。そんな真相は……
表題作で、シリーズ最初のエピソードだけど、作品の世界観をしっかりと描いた話だと思う。
意外性という意味では2編目『ヘビを愛した容疑者』。二匹目の蛇を飼っていた男が遺体で発見された。現場の様子から、自殺と思われるのだが、死亡推定時刻のあと、その家へ入る人影が目撃されていた。それは一体?
ヘビの飼育を巡る蘊蓄から、ヘビの愛好家の話題、さらに動物を飼うときのルールへ……と流れて、その事件の真相そのもの……ではない落としどころへというまとめ方が見事だった。3編目、『カメを愛した容疑者』も、同じようなところがあるけど、こっちはちょっと「愛した」のかな? とも感じるところが。
ただ……基本的なキャラ付のところで、薄巡査が人間よりも動物を愛している、っていうのは良い。でも、その中で、ことわざとか慣用句とか、そういうのを間違えまくったりとか、作中で動物の名前が出るとそこにだけ噛みついたり(例えば、「犬の散歩をしている人が遺体を発見した」と聞いて、「その犬の種類は?」とか言い出す)っていうのはちょっと鬱陶しく感じるところも。この辺り、福家警部補とかにも通じるところを感じ、犯人視点でそういうのを見ていらつくのはわかるけど、それが味方でもやっぱりイラっとするんだな、と思ったりする(笑)

No.4322


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