(書評)天球駆けるスプートニク 未到の空往く運送屋、ネジの外れた銀髪衛精

著者:ツカサ



西暦2030年7月7日、旧日本時間16時32分16秒。人類は空を奪われた。突如、上空に現れた謎の飛行物体「衛精」により、すべての航空機が199フィート以上の航行を許されなくなった。人々は低空飛行の技術に特化したが、それでも本来の速度には到底及ばなかった。そんな時代、安全空域をはるかに超えて空輸を行う運び屋イバ・タクロウ。彼の相棒は、銀髪の犬耳少女チェルシー……
ということで、飛行機を使った運び屋の物語。ノベルゼロレーベルの作品だと、『ゴースト・ギャロップ』(富永浩史著)も、飛行機を扱った作品だけど、「男くさい話」っていうのを描くのに、飛行機っていう道具は使いやすいものなのかな? と思える。「運び屋」なんていうのも、その傾向に拍車をかけている気がするけど。
物語としては、冒頭に書いたけど、「衛精」の存在により、一定以上の高度で飛行をすると、その攻撃で迎撃されてしまう、という状況ができた世界。しかし、その中で、タクロウだけは、その高度の限界を超えて荷物を運ぶ。それは、相棒であるチェルシーという存在が大きくて……。そんな話を連作短編形式で描いた話、ということになる。
WLFという飛行機を生産している会社の研究者を名乗る女性を運ぶ1編目。そこで、世界観および、タクロウがどういう存在なのかを描き、2編目で、チェルシーとタクロウの関係・過去が描かれる。そして、3編目、臓器移植を待つ少女を、そのタイムリミットまでに運ぶ物語、という構成。各エピソードで、だんだんと、世界観、タクロウ自身の掘り下げがされていく、という辺りの作り方なので、まず、物語に入りやすいな、というのを感じる。
こういうと何だけど、途中まではチェルシーって何なの? という感じではある。だって、ただ飯を請求して、なおかつ、飛行機とかには無駄なスペースとか作って寝たりしているだけだもの(笑) そして、そんなチェルシーと罵り合いながらも、でも、要求にこたえるタクロウ。ところが、だんだんと関係性が見えてくると、その理由が明らかに。謎が明かされるとともに、だんだんとコンビの絆を感じる辺りが、作品の肝なのだろう。勿論、高高度を飛ぶことのリスク、そして、タクロウを敵視する運び屋、その過去の話なども絡んできて、序盤、なんだったのだろう、というところから始まった物語は終盤にどっぷりと浸かっていた。
ただ、だんだんと判明してきた、という段階である、というのは、完全に明かされた、というわけではない、ともいえる。
タクロウがチェルシーと飛ぶことによって払ったツケのようなものが出ている、とか、そもそも衛精とは何なのか? タクロウ&チェルシーとの因縁。そういうものの決着はまだつかない状態で終わっている、というのが大きい。この辺りは、続編前提なのだろうか? 出たなら読みたい、とは思う。

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