(書評)レプリカたちの夜

著者:一條次郎



動物のレプリカを作る工場で働く往本は、残業中の深夜、動くシロクマを目撃する。野生のシロクマはとっくの昔に絶滅したはず。工場長からの命で、シロクマについて調査をすることになるのだが……
第2回新潮ミステリー大賞受賞作。
うん、よくわからん! そもそも、これってミステリーか?
選考で伊坂幸太郎氏が絶賛した、ということらしいのだけどなんか納得できる。やりとりそのものは、伊坂氏の作品のそれを彷彿とさせる。主な登場人物としては、往本、同僚である粒山、うみみずと言った面々。往本と同い年というけれども髪が薄く、しかし、何か多くの女性と付き合っているなどという粒本。動物の話になると、途端に人が変わるうみみず。例えば、うみみずが動物を語るとき、ある意味、理屈が通っているような、しかし、屁理屈にすぎないような動物愛護の主張というのは、『陽気なギャング』シリーズの響野の話術とかが頭に浮かぶし、いきなり突拍子もない状況が出てくるあたりも何かそう感じさせる。
ただ、伊坂氏の作品、特に初期の作品って、その中でも物語がどこへ向かっているのか? というのは明らかだった。しかし、本作の場合は……
そもそも舞台設定がどうなっているのか、それ自体がよくわからない。深夜の工場にシロクマが現れた。それ事態は異常なことだって皆が思うだろう。しかし、この作品世界ではすでにシロクマ(というか、多くの野生動物)が滅んでいるという設定が明かされるのはある程度、ページを読み進めた後。しかも、それが当たり前のようにつづられる。そして、工場でレプリカが作られている理由なんていうものも何となく「こうじゃないか」レベルでつづられるのみ。
また、物語として、どうにも?み合わない部分とか、そういうものが出ているのだけど、それは何故なのか? この謎自体は、タイトルなどもあって何となく想像することができる。しかし、それは当初からこの結末へもっていくものだったのか? という疑問も浮かぶ。だって、そのすれ違いとか、そういうものが先に書いた変てこなやりとりの源泉になっているのだから。それをとりあえず、物語としてまとめるためのオチじゃないかな? とすら思えてしまうのだ。そのオチもカタルシスがあるとか、そういう感じではないし。
もっとも、じゃあ、つまらないのか? と聞かれるともそうとは言い切れない。逆に、面白かったか、と言われても……って感じである。とにかく、色々な状況に振り回されての困惑と、その中のよくわからない酩酊感というのが何よりも印象に残る。
多分、この作品は、読んでみないとわからないだろう。自分で書いていて、作品がこうだ、と書ききれた気がしないもの。

No.4328


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