(書評)恋のゴンドラ

著者:東野圭吾



里沢温泉、そのスキー場を舞台に男女8人の恋模様を描いた連作短編集。
本作を出版している実業之日本社で出している『白銀ジャック』『疾風ロンド』『雪煙チェイス』と同じスキー場が舞台であり、一応、時系列的には『雪煙チェイス』の前ということになる。
正直、うーん……という感じ。著者の作品というと、やっぱり魅力的な謎、ひっくり返しと言った謎解きメインのミステリ作品というイメージ。先に書いた同じスキー場を舞台にした作品でも、事件が起きて、テンポの良い展開によって読ませる部分が大きかった。しかし、本作はあくまでも人間関係が主軸。イマイチ、あっさりとした印象だけが残った。
正直、個人的な評価は高くないのだけど、その中で面白かったエピソードを。
同棲中の恋人に嘘をつき、合コンで知り合った女性とスキー旅行へやってきた広太。ところが、ゴンドラで乗り合わせた女性グループのその恋人が……(『ゴンドラ』) 勿論、広太の状況は自業自得そのもの。同棲しているだけでなく、事実上の婚約をしている女性を裏切って、だもの。しかし、そのグループで話題になっているのは、「恋人が浮気をしたらどうするか?」というもの。もしかして、バレている? そんな嫌な緊張感と、そして、さらにどうしようもない状態に陥る結末は……ある意味、圧巻。ある種のギャグ小説的な形で面白かった。
同僚の麻穂と結婚をした月村。麻穂の実家で、今度、機会があったらスキーを教えてほしいと言ったことから、スキー旅行に一緒に行くことに。しかし、その麻穂の父は徹底的なスノーボード嫌い。スノーボーダーである月村は、それを隠して旅行に同行するが……(『スキー一家』) この作品はどっちかというと、奥田英朗氏の作品とかみたいな印象。実家との関係とかって、いかにも奥田氏の作品にありそう。正直、スキーもスノボもやっていない私には、その対立みたいなものはよくわからないんだけど……多分、あるんだろうな、こういうの。まぁ、そんな中での策略は、著者らしい気はするけれども。
サクサク読み進められる作品であるのは確か。多分、著者に対する期待値のボーダーが高い、っていうのもあると思う。ただ、それを差し引いても、本作の出来はイマイチかな、と思えてしまう。

No.4329


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