(書評)君は月夜に光り輝く

著者:佐野徹夜



「発光病」、月の光を浴びると体が淡く発光するという不治の病。しかも、その光は死期が近づくにつれ強さが増すという。そんな病で入院しているクラスメイト・渡良瀬まみずのもとへ、クラスを代表して見舞いへ赴くことになった岡田卓也。ひょんなことから、卓也は、彼女が「死ぬまでにしたいこと」を代行することになって……
第23回電撃小説大賞・大賞受賞作。
え~っと、まず、益体もないことから書き始めると、非常に典型的なボーイ・ミーツ・ガール。それも、ハッピーエンドではなく、切ない結末を迎える、という系統での。そういう意味では、最近、自分がお世話になっているWEBラジオ「ラノベハスラー」様が提唱するところの「一夏のボーイ・ミーツ・ガール」モノの路線と言えるだろう(本作の舞台は夏だけじゃないけど)
ただ、ライトノベルなどの作品の場合は、主人公、ヒロインが出会って惹かれ合っていくのだけど、どちらかに決して相手に言えない秘密があり、その秘密が明らかになることによって切ない別れへと向かうというのがお約束。しかし、本作の場合、その秘密の部分がない、というのが特徴と言えると思う。あくまでも、主人公の卓也、ヒロインであるまみずの心境という部分だけで勝負をした作品になっている。
何しろ、冒頭、卓也とまみずが出会った時点でまみずは不治の病に侵されている、というのは明らか。卓也自身、それを知りつつ、まみずの「やりたいこと」を実行していく。まぁ、その「やりたいこと」は色々。離婚した両親の真意を探る、なんていうヘビーなものもあるにはあるが、どちらかと言えば、「本当にやりたいのか?」と思うようなもの、「その場で思いついただろ!」と思えるようなものが大半。カップルだらけの遊園地に行って、一人で絶叫マシーンに乗り、カップル用のパフェを食うとか、どんな嫌がらせだよ!(笑) でも、そんな感想を大笑いで聞くまみずに、少しずつ惹かれていく。
そして、そんな卓也の心にある思い枷。それが不可解な死を遂げた姉・鳴子の存在。姉の死から、母は病的に自分へと干渉し、卓也自身、姉の死の影響が一つの行動原理へと繋がっていた。そんなときに出会ったまみずの存在。一方、まみずにとっては不治の病というのが、全ての諦観となっていた。それが……
惹かれ合う二人、ではあった。しかし、終盤のまみずの言葉によって、出発点が真逆であったこと。それでも惹かれ合っていたことが明らかになったあたりで、完全に心を持っていかれた。冒頭に書いたように、作品の一種のファンタジー的設定で、という作品が多い中(もちろん、それを活かしきることは素晴らしいことだが)、心情描写という一点でここまで読ませるのは見事の一言。
「発光病」という存在はラストシーンのある部分以外では、それほど重要な要素ではない(現実に存在する別の病でも良い) でも、それがあるからラストシーンが映像的に思い浮かぶのだろうし、また、主人公の気持ちの切り替えにもつながったのかな? そんな風に思う。

No.4331


にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0