(書評)傷だらけのカミーユ

著者:ピエール・ルメートル
翻訳:橘明美



朝のパサージュ・モニエで起きた宝石店強盗。偶然、その出撃準備を目撃してしまった女性・アンヌは、重傷を負い、さらに強盗は執拗に彼女を追う。そして、そのアンヌは、カミーユ警部の恋人であった。2度と愛するものを失いたくない。カミーユは、アンヌとの関係を隠し、その強盗犯と戦うことを決意するが……
悲しみのイレーヌ』、『その女アレックス』に続く、カミーユ三部作最終章。日本では『その女アレックス』が先に刊行されたわけだけど、物語的に、最低限『悲しみのイレーヌ』は読んでおいた方が良い。完全にその物語が前提として描かれているため。
物語は、カミーユ、アンヌ、襲撃者という3人の視点を主軸に展開する。
「刑事として」の仕事を優先した結果、妻・イレーヌを喪ったカミーユ。それと同じ想いは二度としたくない。故に、自らとアンヌの関係を隠し、襲撃者を追う。元々、上からの命令無視も辞さないカミーユ。その行動は、その想いによってさらに暴走していく。そして、それ故に、警察内部でも孤立していく……
一方の襲撃者。冷静で、しかし、暴力的。なぜ、アンヌを執拗に追うのか? 当初は、目撃者であるアンヌを消せば……。しかし、早い段階で、彼と思しき人物は判明する。しかし、一度は引退したはずなのに、なぜ彼は再び事件を起こしたのか? しかも、当初は目撃者を消すため、だったのに、バレてしまったはずなのに、それでも執拗にアンヌを追うのは何なのか? そして、そんな襲撃者の存在に怯えるアンヌ……
追う者と追われる者。かなりえげつない暴力をふるって迫ってくる襲撃者の恐ろしさと、強引な方法で襲撃者を追い、自らも追い詰められていくカミーユという構図でかなりサスペンスフルに物語が進行していく。というか、物語冒頭、アンヌがどのように事件に巻き込まれたのか? 事件後に、防犯ビデオか何かの映像で追っていくカミーユという形で始まるのだけど、この時点でぐんぐん引き入れられた。暴力描写はかなりえげつないけど。
そして、その事件を追う中でこの著者らしく、ひっくり返しがあるのだけど……その結末があまりに無常。
妻を失い、傷を抱えていたカミーユ。だからこそ、アンヌとの関係が始まった。しかし、それは……
今作の事件で刑事としての立場、将来も危うくなり、しかも、新たな傷がもう一つついてしまったカミーユ。文字通りそれは「傷だらけ」。
この後、彼がどうなったのか? それが気になって仕方がないけど、でも、ここで終わるからこその余韻ということも言えるのだろう。

No.4335


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