(書評)恐怖小説 キリカ

著者:澤村伊智



「澤村さんの応募作、『ぼぎわん』が大賞となりました」 日本ホラー小説大賞を受賞した澤村電磁こと香川隼樹。応援してくれる妻の霧香、様々なアドバイスをくれた創作仲間たち。新たな一歩へ、と思われた矢先、創作仲間の一人が「作家は不幸でなければ」などと言い出して……
これ、ものすごく感想が書きづらいぞ!(笑) というのは、かなりのメタネタを取り入れているため。
物語は、冒頭に書いたように、香川が新人賞を受賞しデビューへ、というところから始まる。そのタイトルは、文字通り、著者のデビュー作、当初のペンネームであるし、KADOKAWAだの何だのというものも実在する会社やら何やら。三津田信三氏の作品などでもある、実際の著者の経験などを取り入れた(ような形)で開始される。ところが、その中で……
第1章の時点で、物語はかなり嫌な感じではある。ホラーと言っても、心霊現象ではなく、ある意味、イカれた存在によるストーカー行為ともいうべきもの。明治時代などの作家、芸術家に不幸な形で命を落とした者が多い、というのから勘違いし、香川を不幸にすることで傑作を送り出させるのだ! というおかしな信念に基づく行動。そこから身を守るうちに……
嫌な話であることは事実。しかし、香川の行動は決して理解できないわけではない……と思ったら……第2章でいきなり物語が反転。そして……
先に感想に困る、というのは、「こういう構成自体が読者には、前作と同じ、と言われるに決まっている」とか、そういうメタネタが大量にあるから。そして、そういうメタネタを用いて、作者自身が……という物語を作ってしまう、ある意味での著者の開き直りなどを評価したい。これはこれでなかなかやれることではないだろう。
勿論、社会風刺ネタとでもいうべきものも入っている。今回は文字通り、ネットレビューとか、そういうもの。自分自身、こういうサイトをやっていて、時には著者自身からメッセージを頂いたりもする。そう考えると、著者と読者って、直接ファンレターを送ったとか、そういう行為がなくとも地続きの関係だ、っていうのはよくわかる。実際の著者が、作中で描かれているような存在とは思わないのだけど、とある作品で、著者がネット上で作品を批判した人物に嫌がらせ行為をした、なんて事件も実際に起きているだけに全くありえないことじゃない、っていうのが嫌な感じを増幅させる。
メタネタの是非とか、その辺りの評価は人によりけりだと思うのだけど、リーダビリティの高さ、テンポの良さなどもあってしっかりとたエンタメ作品に仕上がっていることは間違いない。多少、スプラッタ描写とかはあるけど、それが気にならないなら楽しめるんじゃなかろうか。
……にしても、これをKADOKAWAじゃなくて、講談社から出すんだ、というのが面白いところだったりする。

No.4337


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