(書評)209号室には知らない子供がいる

著者:櫛木理宇



リバーサイドに建つ瀟洒なマンション。その209号室には、「葵」という少年が住んでいる。そして、その少年と出会った女たちの生活は、次第に歪んでいって……
という連作短編集。
これまで私が読んだ著者の作品は、『ホーンテッド・キャンパス』シリーズ、『ドリームダスト・モンスター』シリーズ。どちらも超常現象、心霊、ホラーというような要素が含まれている作品ではある。しかし、同時に、どちらも少年少女の(『ホーンテッド』の場合、年齢的には成人しているけど)恋愛要素などが含まれるため、「怖さ」と「甘酸っぱさ」がどちらもある、という作品であった。しかし、本作の場合、その甘酸っぱい要素が一切なく、素直に嫌な話になっている。
それをまず感じるのが1編目の『コドモの王国』。3歳になる息子の躾に追われる主婦の菜穂。ひたすらにわがままを通す息子に、夫は全く非協力的。そんなとき、息子は葵という少年に出会い、一緒に遊んだりするようになるのだが……。「〇〇しちゃダメ!」とか、そういう言葉を繰り返す、「嫌われ役」になっている菜穂。叱られてばかりいる息子を甘やかすことで「味方」の振りをする夫。そこにストレスが溜まっていく……。最終的に、皆、おかしくなって……でホラーと言えるのだろうけど、その前の段階でイヤミスとか、そういう雰囲気が強く、「この作品はこういうテイストなのだ」というのを示していると思う。
ホラーテイストとしては2編目の『スープが冷める』かな? 夫が単身赴任中のため、義母と2人、マンションで暮らすキャリアウーマンの亜沙子。料理をしてくれたりとか、決して悪い人ではない義母だが、何か打ち解けない日々。そして、義母は当然のように孫を作ってほしいと願っている。そんなある日、義母は葵という少年を拾ってきて……。もう、だってこの時点でおかしいでしょ? しかし、何か悪いことをしたと思う様子すらない義母。自らのキャリアもあって言い出せない亜沙子。その中で、自覚していく自分は義母が嫌いだ、という感情。……義母自身が狂気に彩られ、そこから伝染して……という連鎖と、その嫌な結末。後味、最悪(誉め言葉として)
そして、そんな葵が住んでいる、という209号室に住む女性・和葉の物語である『あまくてにがい』。彼女自身の話については、私は兄弟はいないけど、それでも姉妹間の確執とか、そういうものがあり、そこへ葵という存在が現れて狂っていく、という嫌な話ではあるのだけど、ここまでのエピソードの時系列とかがまとまり、同時に葵の存在が本当に……というのが明らかになる。そして、マンションのオーナー・羽美のエピソードで、正体、そして、解決へと至った……?
一応、葵の正体について、合理的な解釈などがされる辺りは、『ホーンテッド・キャンパス』などと似ているのだけど、やはりそこに至るまでの味付けが思い切り異なっていて、本作はひたすらに嫌な感覚を前面に持ってきた作品だったといえるだろう。というか、この読後感は、イヤミスと言われる作品を読んでいるときのそれに近かった。

No.4338


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