(書評)スイーツレシピで謎解きを 推理が言えない少女と保健室の眠り姫

著者:友井羊



極度の吃音症のため、人前で話をするのが苦手な菓奈。そんな彼女が、密かに思いを寄せるのは、菓子作りが得意なスイーツ男子の真雪。あるとき、真雪が、保健室登校を続ける「眠り姫」こと、悠姫子のために作ったチョコが紛失して……からの連作短編集。
ある意味、この作品ほど「タイトル通り」っていう話も珍しいのではないだろうか? そんなことを思う。
物語は、吃音症に苦しむ少女・菓奈が、身の回りで起こった菓子絡みの事件に巻き込まれ、そして、それを菓奈が、菓子作りをする中で真相に気づく、という構成。
菓子作りは化学に通じるものがある。これはよく言われること。ケーキなどを焼く際の膨らし粉。コーティング。ちょっとでも分量や、順番を間違えると、全く違った結果になる。もっと言えば、失敗してしまう。だから、レシピは厳守しなければならない……と。まぁ、菓子作りなんてロクにしたことがない私は、ただ「そう聞いている」というだけのことなのだけど。そして、本作の謎解きの多くは、そのパターン。正直なところ、「へー」と思うところはあるのだけど、知識だけとはいえ、今度はこんな感じかな? と想像できてしまう部分があるのがちょっと残念。
まぁ、そうは言いつつ、菓奈の推理の冴え、そして、吃音ゆえにしゃべること自体が苦手にもかかわらず、犯人と言える人物に推理を言い聞かせる、っていう辺りに彼女の頑張りを感じるところはあるのだけど。
と、正直なところ、ちょっと……と思うところがあった中での本編エピソード最終話『コンヴェルサシオンはなくならない』。デジタルカメラのデータが消えてしまった。誰かが故意にそれを削除したのか? それとも……。菓奈は、その真相を解明を依頼されるが……
ここでも、菓奈の、素材などについての知識を用いて推理が展開されるのだけど……しかし……。ここまでのエピソードで披露していた推理と比べるとずいぶんと掘り下げ不足に感じられるところ。そして、菓奈が吃音に苦しんでいる、という意味。その辺りがしっかりと伏線として活きていて、設定とかの意味を感じた。何というか、ガラッと作品のテーマが変わったように感じられる。
先にパターンが似通っている、と書いたのだけど、それは私が、基本的に立て続けに読む、という読み方をしているからかもしれない。1日1編ずつ、とか、そういう読み方だとまた、印象が変わるかもしれない、というのは最後に付け加えておく。

No.4339


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