(書評)リボルバー・リリー

著者:長浦京



関東大震災からまもなく1年。震災直後から、名を変え、身を隠して暮らしていた少年・慎太は突如、陸軍に追われることに。慎太と懇意にしていた男性・国松は、慎太を守るため、一人の女性を紹介する。小曽根百合。実業家・水野寛蔵の下、幣原機関で訓練を受け、各国から「最も排除すべき日本人」と呼ばれた美しき諜報員……
第19回大藪春彦賞受賞作。シンプルイズベスト……というか、物語は単純。慎太を狙い、襲い掛かる陸軍。そんな追っ手から逃れるために手を貸す百合。とにもかく、物語はずっと、その逃亡劇が描かれる。
勿論、百合というのはどういう存在なのか? また、なぜ、慎太は狙われるのか? その原因が、どうやら彼の父にある、というのはわかるのだが、具体的に何をしたのか、は謎のまま。そんな中で物語が進んでいく。
こういうと何だけど、百合は確かに別格の強さを持っている。でも、この作品の良さは、「強すぎる」というわけではないこと。追っ手の側にも、策略などがあり、当然のことながら数の利もある。さらに、国松の紹介で知ることとはなったとはいえ、守るべき相手である慎太との信頼関係が構築されているのか? と言えばそうとも言えない。確かに慎太にとって、頼るべき相手ではある。しかし、百合がどこまで頼れるのかはわからないし、そもそも父、さらに母や双子の弟を殺されてしまった、という敵への恨みもある。そんな中でちょっとした掛け違いによって、何度も危機に陥りながら、という物語の進め方なので非常にスリリング。
まぁ、結構、視点の移り変わりが激しく、しかも、当初は敵味方もわからないし、慎太がどこへ行けば逃げ切れるのかもわからない。五里霧中での逃亡劇なので、ちょっと混乱したところがあった、というのは正直なところである。ただ、物語が進み、それぞれの立ち位置が明らかになってくる中、だんだんと加速していった感じがする。そういう意味で、序盤はちょっと入りづらいと感じるところがある、というのは頭に入れておいた方が良いかも。
よくよく考えれば、かなり荒唐無稽ではあるんだけど、こういう作品なので、そこを突っ込んじゃいけないよね(笑)

No.4342


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