(書評)探偵・日暮旅人の残り物

著者:山口幸三郎



目に見えないものを「視る」ことで依頼を解決する探し物専門の探偵・日暮旅人。そんな日暮旅人の活躍を描いた番外編短編集の第2弾。
旅人を「アニキ」と慕う雪路が、旅人と大喧嘩をした。その理由は、旅人が受けた依頼。それは、雪路家の複雑な家庭事情に関わるもので……『雪消の隘路』。
まずは、この1編目。雪路の妹・麗羅って、これまでも話には出てきたけど、考えてみるとほとんど、作中で掘り下げられていなかった。複雑な雪路家の事情。その中での麗羅、その母、麗子の問題。今回のタイトルが『残り物』だけど、文字通り、残してきた部分を片付けた、という感じがする。黒い旅人っていうのも垣間見えたし。
そういう積み残しを、っていう意味では2編目の『花の夕影』も。
本編でも多く登場した増子刑事。彼女の夫が不審な行動をとっている。しかも、それは年下の少女とデート!? 思わず尾行してしまう増子刑事だったが……
女性ながら、どちらかというと鬼刑事という印象だった増子刑事。なんか、このエピソードを見ているとそうじゃない、という部分も多くあるのだな、という感じ。なんか、今回の増子さん、かわいらしい(笑) そんな中で夫がデートをしていた相手の事情。増子刑事と夫の関係性。それらがうまく結び付けられていて、きれいにまとまったな、と感じる。
そして、470頁あまりの本書のうち、270頁あまりと、長編作品並みの分量を持つ『祭りのあと』。
街を挙げての大イベント「花フェス」。地元名門校のオーケストラ部の活躍、人気ケーキ店の出店、モチーフ……様々に盛り上がる中、旅人はある人物、モノを探してほしいという依頼を受けていた。一方、イベントでは「マジック仮面」なる者が現れていて……
時系列的には結構、前の方のエピソード。先に書いたように、長編並の分量があるのだけど、恩師に報いたい少年がいたり、雑踏を狙ってのスリ集団がいたり、パンケーキの行列に並んで不審がられる雪路がいたり(笑)と、結構、ドタバタとした印象。どちらかというと、結構、早い段階で旅人の「黒い」部分が出たりとかしていたシリーズだっただけに、今回の話、実は異色だったんじゃないかと思う。この作品のエピソードは、どうやら書下ろしらしいのだけど、ある程度、構想を練っていたもののどうしても本編の関係上、出すことができなかったのかな? なんてことを思わずにはいられない。
前作では、まだもう1冊? とか書いたのだけど、今回こそ、シリーズ最終巻。本編が終わった時とはまた違った感じだけど、終わってしまうのが寂しいな、という余韻は残る。

No.4343


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