(書評)F 霊能捜査官・橘川七海

著者:塔山郁



事件中に負った怪我による昏睡を経たことにより、霊の姿や声を認識することができる能力に目覚めた橘川七海。その能力を買われ、難航する未解決事件を捜査する「重要事案対策班」の班長となった彼女は、その能力を用いて事件捜査に当たり……
という形での連作短編集。全4編を収録。
霊を見ることができる存在が、その能力を用いて犯罪捜査を行う。こういうと何だけど、こういう作品自体は数多くある。小説ではないけど、個人的に好きだった作品としては漫画『サイコメトラーEIJI』とか、ああいうのを思い出す。ただ、この作品の場合、それに制約があること、というのがメインに出される形で描かれた話と言えるだろう。
というのは、当然と言えば当然なのだけど、霊と話した結果……というのは証拠にならない。なので、七海の存在はあくまでも影の存在。現場にはいくものの、周囲の警察官からは理解されないし、手柄にもできない。また、そもそも霊にいつも出会えるのか、というとそうとは言えないし、霊もまた生きている人間と同じく嘘をつくことがある(というか、自らが死んでいる、というのに気づいていないケースも多い) そういう意味では、人間か、霊か、という違い以外は普通の捜査に近い、ともいえる。
そんなのことを印象付けるのは1編目『ラブ・アブダクション』。不倫相手の子供を誘拐し、子供を隠したままに事故死した被疑者。早く探さねば、その子供の命が危うい。そこで、七海は、被疑者の霊と話をするのだが……。誘拐したことは認め、仕事仲間に預けたと独白。しかし、その相手が誰なのかは話さない。そんな中でヒントとなるのは、霊となった被疑者の生前の生活の様子であり……。そこから子供のもとへ、っていうのは実際にはもっと時間がかかるだろうけど、霊との対峙でもそれだけですべてがわかるわけではない、という作品のイントロダクションとして、十分に機能した話だと思う。
物語を読んでいると、主人公である七海の過去とか、色々とあるようなのだけど、その辺りについて、一応、触れているだけ、という感じであまり掘り下げられた感はない。同じ宝島社の文庫書下ろしだと、例えば、佐藤青南氏のエンマ様シリーズとか、シリーズ化をしている作品も多いだけに、この作品もその辺りは軽く流すことで、今後のシリーズ化も視野に入れているのかな? というのを感じるところではある。

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