(書評)白い衝動

著者:呉勝浩



小中高一貫校でスクールカウンセラーとして働く奥貫千早。彼女のもとへ相談に訪れた少年・野津秋成は言う。「ぼくは、人を殺してみたい。できるなら、殺すべき人間を殺したい」 奇しくも町で噂されるのは、かつて、3人の女性を強姦した上に執拗に暴行をした男・入壱要が出所し、近所に住んでいるらしい、というもので……
あくまでも個人的な印象論なのだけど、著者の作品の魅力は何か? というと、私は「魅力的な謎」であると思っている。『道徳の時間』は、イタズラ事件は誰なのか? かつての犯人は刑務所の中なのに? という謎がある。『ロスト』では、身代金を小分けにする理由。そして、芸能プロ社長をダミーに仕立て上げる理由は? という謎でひきつけられた。
ところが、本作の場合、謎というのがなかなか現れない。その意味で、大きく物語の構成が違うと言えるだろう。
そして、一方で前科者たる入壱を巡っての周囲の反応。そんなとき、千早の夫がパーソナリティを務めるラジオ番組で、出演者が入壱の住所をバラしてしまう。周辺住民が騒ぎ出す中、入壱に対するカウンセリング、さらに、千早の勤める学園でヤギが殺される、という事件が発生して……
前科者をどう扱うのか? これって、更正政策の要と言っていいような問題。特に凶悪犯罪者ともなれば。かつて、凶悪な事件を起こした、という現実があり、そんな人間が近所に住むということは恐怖の対象でしかない。しかし、死刑にでもならない限りは、必ずどこかに住まねばならない。そして、そのような排除を続ければ続けるほど、更正は難しくなってしまう。理屈ではわかっていても……多少、過剰かもしれないけれども、この辺りの問題提起は良かった。そして、その賛否は別れると思うのだけど、作中で示される一つの提案はあり得ることなのだろう。
ただ……正直なところ、主人公・千早を巡っての人間関係が面倒くさいな、っていうのを思わずにはいられない。大学の助手だった、ということで、入壱のカウンセリングに付き合うことになるんだけど、その学生時代の恩師・寺澤との関係。はたまた、夫との関係。さらに、入壱自身との関係というのが全て因縁というのはちょっと無理矢理な感じがする。
問題提起は良いと思うのだけど、そのために色々なところに無理が生じているような……というのが素直な感想。

No.4347


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