(書評)危険なビーナス

著者:東野圭吾



「行方不明なんです、明人くん」 獣医である伯朗のもとに現れた女性・楓は、疎遠である弟の妻を名乗り、そして、弟が行方不明になっていることを告げる。彼女に頼まれ、資産家である弟の家族である矢神家へと近づく伯朗だったが、だんだんと楓に惹かれていって……
うーん……なんか、色々な要素が含まれているけれども、それらが交じり合うことなく、バラバラに物語が進んでしまった、という感じがする。
売れない画家であった伯朗の実の父。その父の死後、母は資産家であった矢神康治と再婚。そこで生まれたのが異父弟の明人。だが、矢神の家とは相いれず、席を入れることもなく、伯朗は実の父の戸籍へと残った。そして、母も死亡し、弟とも疎遠に……
売れない画家であった実の父が、死の直前に描いていた奇妙な絵。それは、それまでの作風とは全く異なるもの。しかし、その絵は行方不明に。一方で、没落したとはいえ、資産を多く持つ矢神家。当主である康治が死に瀕し、矢神家の面々はその遺産を巡って蠢きだす。そして、楓の協力をする中で、その魅力にひかれていく伯朗。主に三つの要素が物語を彩る。
まぁ、途中までは謎とがどうつながっていくのか? という点で興味をひかれた。実際、研究者であった康治が研究していたことは何なのか? 父が死の直前に描いていた絵は何だったのか? 取り壊されたはずなのに、なぜか昔のままに残っている母たちと暮らした家。それが明人の失踪とどうつながるのか? そして、楓は?
というはずなのに、結局、その研究が明らかにされると何が問題だったのかイマイチよくわからない。世界的な発見につながる……として、それは問題なのだろうか? しかも、楓の正体についてもどうにも拍子抜け、という感じだったし。
何よりも「うーん」と感じてしまうのは、正直なところ、楓の魅力がイマイチわからないこと。だんだんと楓にひかれた伯朗が、矢神家で同じように楓に声をかけている悠磨という男と会話などをするとイライラして……となるんだけど、そもそもの楓があまり魅力的に思えないのでどうにもドン引きしてしまうのだ。大体、伯朗が惹かれているようなシーンの理由が、スカート丈が短いとか、そういう部分ばかり目立つし。また、いくら疎遠だったとはいえ、周囲に誰も存在を知られていない女性が「妻です」と来たら怪しむものじゃないかな? 実際、伯朗自身も多少の疑念は抱いているのに、なぜか楓について調べようともせずに、っていうのはどうにも不自然に映ってしまう。
正直、著者が2016年に刊行した作品は全体的に低調だったかな、という評価にならざるを得ない。

No.4349


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