(書評)美術鑑定士・安斎洋人 「鳥獣戯画」空白の絵巻

著者:中山啓



作者不明ながら、抜群の認知度、人気を誇る『鳥獣戯画』。その失われた部分とみられる十枚の断簡が京都の寺で発見された。日本中がその真贋に注目する中、その鑑定に向かった日本美術の重鎮・渋谷は不可解な事故死を遂げる。しかし、様々な鑑定人により、それは本物と鑑定され、その所有を巡ってオークションが開始されることになる……。そのような中、一応の鑑定にも加わった学芸員・安斎洋人は違和感を覚え……
こういうと何だけど、物凄くタイムリーなタイミングで刊行されたなぁ、というのをまず思った。
結構、先のことまで物語の流れを語ってしまうので申し訳ないけど、そうしないと語りづらいので書く。
物語は冒頭に書いたように、発見された『鳥獣戯画』の一部と思しき断簡が本物と鑑定され、さらに、オークションにかけられる。中国人バイヤーなども参加する中、日本の大手化粧品会社の社長が10億という金額で落札。しかし、その直後、その鑑定への疑惑を週刊誌が報道。さらに、落札者と最後まで競ったバイヤーが偽名であることまで判明する。そんな中で、関係者が次々と不審な死を遂げて……
最初に書いちゃうと、殺人事件の方の結末は結構、ショボい。そもそも動機のありそうな関係者が限られている上に、やり方自体も結構、杜撰なので……。また、洋人が断簡に対して感じた違和感の正体とか、そういうものは「そういうこともあり得る」かも知れないけど、ちょっと飛躍しているとも思う。ただ、それらを差し引いても、美術品鑑定、価値なんてものを巡る話が面白かった。
なぜタイムリーか、というと、昨年末(2016年末)にテレビ番組『開運! なんでも鑑定団』で、「国宝級の品が発見された!」みたいなことがあり、しかし、その後、週刊誌やらなにやらで、「いや、アレは偽物」とか、そんなやりとりが繰り広げられているまっただ中だから。
そもそも、美術品の真贋とかには難しい部分がある。作者などが遥か昔に死んでしまった美術品。情報もそれほど残っていない。その真贋の鑑定は難しい。科学鑑定などで年代とかを鑑定する方法もある。でも、それだけですべてが鑑定できるわけではない。また、全てにそれをせよ、というのは金銭的にも、時間的にも不可能。……勿論、その一方で、「偽物」とバレたら困る、という事情もないわけではない……
また、オークションでの高値の理由は「雰囲気」。出所の怪しい、ある意味、誹謗中傷と言えるようなものであったとしても、疑念が少しでも生まれれば、高騰は望めない。そんな美術品取引の話はなかなか面白かった。
そういうのを鑑みると、殺人事件をめぐる謎解き、というよりも、美術品取引を巡るアレコレに興味を覚えた、というのが私の感想になると思う。

No.4351


にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0