(書評)マカロンはマカロン

著者:近藤史恵



下町の小さなフレンチレストラン「パ・マル」。変わり者ではあるが、抜群の腕を持つ三舟シェフは、同時に、客のもちこんだ謎も鮮やかに解き明かして……
というシリーズ第3作の連作短編集。全8編を収録。
このシリーズも久しぶり。前作を読んだのが2011年の3月だから、実に6年ぶり。でも、「こんな設定だったっけ?」みたいなことがないのは流石、というべきなのかも知れない。確か、こんな感じだったな、という記憶そのままだったし。
ということで、すんなりと話に入れたので、あとは各エピソードを読んでの感想。
「パ・マル」と同じ商店街で開店した自然食品の店主。フレンチに何か思うところがある、という彼女が抱えているものは?(『コウノトリが運ぶもの』) 個人的に、あまりフレンチっていうものをよく知らないのだけど、確かにフレンチというと……というイメージはある。しかし、それだけじゃない。そして、三舟シェフが、彼女の父の持っていた道具を使って示したものは……。導入編としても申し分ない出来だと思う。
出していないはずの「ブルーベリーのタルト」を求める問い合わせが相次ぐパ・マル。その原因は、SNSに投稿されたあるブログだったが……(『青い果実のタルト』) 飲食店などに行っても、その料理の写真を撮っている人、というのはよく見かける。そんなSNSの投稿が原因で、っていうのはいかにも現代的。そんなSNSの投稿と、レストランの持つ特質が出会うとき……。ちょっと苦い内容である辺りが、いいスパイスになっているな、という感じ。
逆にほっこりしたのが『共犯のピエ・ド・コション』。離婚して、しばらく顔を出していなかったシングルマザーが久々に来店した。息子が大学に行くまでは、と思っていたが、今、付き合っている相手と息子は仲良くなり、再婚をしようと思っている。なぜ、恋人と息子は意気投合したのか? 正直なところ、男の私から見ても、かなりマニアックな趣味だと思う(笑) でも、些細なことで理由を見抜き、そして、自分も共犯になろうとする三舟シェフの優しさ、かわいらしさ、というのを強く感じるエピソード。
三舟シェフと共に修業したという女性が開いた店のパティシエールが失踪した。その理由は? という表題作。これは、粗筋を語ってしまうとネタバレになってしまう感じがするのだけど、この作品で描かれたものに関する話は、某大学の話とか、話題に上がることも増えているだけに、と思う。「マカロンはマカロン」ある意味、それが全てを現しているよね、と感じる。
著者のシリーズでいうと、キリコシリーズが同じような形で発表され、そのまま完結してしまったわけだけど……このくらいのペースでも構わないので、このシリーズ、続いてほしいな、と思う今日この頃。

No.4359


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  •  マカロンはマカロン/近藤 史恵
  • フランス料理店「ビストロ・パ・マル」を舞台としたシリーズの3作目です。 2作目の「ヴァン・ショーをあなたに」の後、新作がないのを残念に思っていたのですが、まさかの新作発売でうれしかったです!(^^) ビストロ・パ・マルの温かい雰囲気はいつも通りで、そこを訪れるお客さんのちょっとした謎解き、そして登場する料理のおいしそうな描写。近藤史恵さんはサクリファイス・シリーズもいいけれど、こ...
  • 2017.04.16 (Sun) 10:41 | 日々の記録