(書評)夏をなくした少年たち

著者:生馬直樹



大人びた少年・啓。言葉の悪い雪丸。いつも妹と一緒にいる国実。そして、僕、拓海。小学校6年の夏、僕らは大冒険に行くはずだった。しかし、その冒険は想像を絶するような後悔として残った。それから20年余り、ある人物の他殺体が発見されたことを皮切りに、その事件が再び動き出して……
第3回新潮ミステリー大賞受賞作。
新潮ミステリー大賞、前回の受賞作『レプリカたちの夜』(一條次郎著)があまりにもぶっ飛んでいたおかげで本作は普通のミステリっぽく見えるけど、よくよく考えてみると、実は謎解きなどはほとんどしておらず「ミステリー?」っていうところがある。
物語は2部構成。第1部。主人公の拓海は、冒頭に書いたような仲間たちとグループを作りつるんでいる関係。しかし、ただの仲良しグループというわけではない。元々、口の悪い雪丸だったが、最近はますます、その傾向が強くなり、何かにいら立っているように見える。そして、その攻撃が向かうのは国実たち兄妹。一方、啓は啓で、母親との関係が良くない。さらに、町では「おかしな奴」という扱いの聖剣という先輩がいて。そんな日常はしかし、花火大会の夜、登山をしたときに終わってしまう。国実の妹の死、という形で……
この感想を書く前に、ネット書店などの感想を見ていると、「少年時代パートの描写」について、「生き生きとしている」と「子供っぽくない」と二分されているのが面白かったのだけど、私は前者の方に賛成かな? 「小学生」と言ってもまもなく卒業の6年生。早い子供なら、第二次性徴期に入っている年齢で、両親の関係とかも見えてくる年頃。そして、中学という新しい環境が目の前に迫ってくる。そういう状況での人間関係として見ると、凄くリアリティを感じる。自分自身が小学校時代は、学年1クラスしかない田舎で育ち、その中の人間関係をウンザリするほど見てきただけに、その時代を思い出した。仲良しグループではなく、何となくの「関係」とかすごくわかる。そして、その崩壊もまた……
そして、そんな20年前の事件を経ての現在。刑事となった拓海が知ったのは、その時代の知人が殺されたこと。事件解決のため、故郷へ戻るが……
個人的にはむしろ、後半の現代パートの方に違和感を感じた。かつてのグループの一人であった啓と連絡を取ったところ、その娘が何者かに誘拐された。そして、その誘拐犯の要求は……。勿論、過去の出来事と結びついているのは確かなのだけど、犯人が偶然にその場に居合わせた、っていうところから無理矢理感があるし、また、謎解き部分については、作中でも指摘されているように「根拠なき確信」で進んでしまうため。ミステリーの公募新人賞受賞作、という前提で考えると、どうしても、いや、謎解きは? と思えてしまうのだ。
とは言え、小さいころからの人間関係、その中の出来事。そういうものが生き方とかにも影響を与えてしまう。そんな部分の生々しさは見事であり、十分に読み応えのある作品だと思う。

No.4365


にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0