(書評)県警外事課 クルス機関

著者:柏木伸介



「一人諜報機関」、「クルス機関」と呼ばれる神奈川県警外事課の刑事・来栖惟臣。彼は、北朝鮮の工作員が大規模テロを企てている、との情報を手にし、一人、捜査へと乗り出す。一方、北朝鮮の工作員・呉宗秀は、「上からの指示」で愛国団体へと接近する……
第15回『このミス』大賞優秀賞受賞作。
まず、内容に入る前に、この文章を書いている丁度その当日(2017年4月29日)、北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、失敗した、というニュースが流れてきた。これが書かれたのが一昨年~昨年くらいのはずだし、そういうことを考えても、ちょうど、ニュースとかネットとかで話題になっているヘイトスピーチとか、そういう問題を念頭に置いてつづられたのだろうな、というのを感じる。
で、物語は、テロを画策している工作員を追う来栖と、その工作員・呉の視点でつづられる。
一人諜報機関、とさえ言われる来栖。公安刑事ということはあるが、外国人マフィアだったり、はたまた、外国の諜報員だったりといった伝手を使い、合法・非合法を問わずに情報を仕入れていく。警察内部でも、どこで情報が漏れるかわからない、ということで単独行動をとり、っていうのはわかるんだけど、どちらかというと当初から持っている伝手の紹介と、来栖自身のキャラクター紹介みたいな感じに思えた部分があったりする。
で、むしろ、面白いと思えたのは呉のパート。当初、「指示」通りに証拠を残さず、完璧な暗殺を実行し突き進んでいく。しかし、一人の補助工作員の少女と出会い、自分が戸籍を買った相手と出会ってしまい、次第にその「完璧さ」が崩れていく。何とか、それを取り繕いながら進めていくのだが、しかし、どんどん破綻が生じていって……。まぁ、工作員として、随分と脇が甘い、とは思う。でも、ただ、目の前のことを確実にこなすことを叩き込まれ、そして、指示が何を意味しているのか、などは考えずに進む、という存在なら、そんな弱点もあるんじゃないかと感じる。そして、その両者が交錯し、決戦へ……
問題はこのまとめ方。公募新人賞の作品でしばしばあるのが、終盤、規定枚数の中に収めるため駆け足になってしまう、というのがあるんだけど、本作でもそんな傾向が見える。しかし、そこにひっくり返しを入れるものだから、いまいちスッキリしない感じに。
時事ネタの入れ方とか、好きな部分があっただけに、まとめ方にもう一工夫欲しかった、かな?

No.4373


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