(書評)本バスめぐりん。

著者:大崎梢



大都市に隣接する町・種川市を巡回する移動図書館「本バスめぐりん号」。会社員、嘱託職員を定年退職後、めぐりん号の新米運転手となった照岡久志は、司書である梅園菜緒子ともに市内16箇所の巡回先を巡る。そして、その巡回先で次々と不思議な出来事が起こって……
書籍に関するいろいろな題材をテーマにしている著者だけど、本作は移動図書館。考えてみれば、図書館は利用したことが多くあるけど(ぶっちゃけ言えば、自分は3つの自治体の図書館を並行利用している)、移動図書館は利用したことがない。そして、マイクロバスに書籍を載せて書籍を運ぶ、という性質上、3000冊程度しか運べず(一応、うちのブログで扱った書籍が現在、4000冊ちょっとなので、それ以下、ということになる)、巡る場所によって何を持っていくのかを決めるなど工夫が必要となる。まず、そんなところが興味深かった。
例えば1編目の『テルさん、ウメちゃん』。2週間に1度、決められた場所を巡回するめぐりん号。ある場所へ、毎回、やってくる女性が本の間に忘れ物を入れたまま返却した、という。しかし、次の巡回先でその本を借りた人は、「知らない」と言い……
この辺り、そもそもが移動図書館ならでは、だよな、と思う。つまり、普通の図書館なら、移動したりはしないから、しばらく時間が経ってから「忘れた」と気づいてもすぐに問い合わせができる。しかし、移動図書館の場合はそうはいかない。また、基本的に限られた本から貸し出しをするから、次で借りられてしまうことも多い。普通の図書館とは違うんだな、というのをまず強く感じた。
2編目『気立てがよくて賢くて』もそういうのを感じる。市内でも閑静な住宅街にある巡回先。しかし、近年は高齢化が進み、利用者が少ない巡回先となっている。巡回先から外すか、という意見も出る中、町にある保育園の園児を呼んでみては? という話になるが……
これが良いのか悪いのかはよくわからないのだけど、建物のある図書館って、一度、作られればそう簡単にはなくすことはできない。しかし、フットワークが命の移動図書館は、そういう変更が容易。その一方で、図書館というのも、住人の憩いの場所、コミュニティの要の一つとなる、というのも言える。そんな立ち位置の綱引きというのがあるんだな、というのを感じさせた。
……と、なんか、作中の謎解きよりも、その中で描かれる移動図書館の立ち位置の方を強く意識してしまった自分。ただ、例えば1編目。年齢も地位も、全く違う存在でも、同じ本を読む、ということで親近感を感じる、みたいなことはこうやってブログなどで感想を書いていてのやりとりでもあることで、「うんうん」とうなずいた。そんな感じで、5編とも明るい形で終わる物語であるし、読後感も良い。1編目で、「コージーミステリー」の話題が出ていたけど、これも立派なコージーミステリーと言えるだろう。

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