(書評)月とうさぎのフォークロア。 St.2 はかなき双月、かくて月食むしろうさぎ。

著者:徒埜けんしん



父の跡目を継ぎ、月夜見一家の総長となった朔。六坂組との抗争の後始末で、監察とのやりとりをしつつも、平穏な時間が流れる。しかし、朔のもとへ、修行のためにやってきた少女のような少年・優月が、新たな陰謀の火種となって……
ということで、シリーズ第2作。
前巻の感想で、「異能バトル要素があるとはいえ、かなりガチなヤクザ抗争モノだった(笑)」という風に書いた。言い換えると、あまり、表紙イラストとか、そういうのから想起されるようなラブコメ要素とか、そういうものがなかったかな? というのを思ったわけだけど、今回は、結構、その辺りの要素を追加してきたように感じる。クラスメイトである柏木さんが、朔に声をかけようとして常に誰かに邪魔されて「うぬぬ」状態になる、とか、朔のもとにいる女性陣が朔に夜這いをかける、とか、そういうシーン多め。167頁のイラストとか、前作では決してあり得なかった(笑) その点でいうと、話が軽めになった気がするんだけど、その分、読みやすくなった、という部分もあるんじゃないかな、と思う。
でもって、今回は、監察と神人の関係。……まぁ、ぶっちゃけて言うと、ヤクザと暴力団対策法みたいなもの。
前巻でも出ていたように、警察や監察は、神人が人間に手を出すことは許さない。そして、下っ端がそれをしたとしても、その影響は上の責任となる。監察(=国、政府)は、そこを利用し、揚げ足をとってでも、神人組織を弱体化させようとしてくる。故に、下の勝手な行動というのは組織維持という意味でも厳罰に処さねばならない……
そのような中、起きてしまったのが優月。「神人」と言っても力もなく、見た目も少女のような彼。そんな彼が、ショッピングセンターで人間の不良に捕まってしまい……。さらに、町では、月夜見一家の直参で、白が頭目である稲羽を名乗る神人が人間に対して迷惑行為を働く。朔は、白がそのようなことをするはずがない、と思いつつも、立場、そして、他の直参との関係上、稲羽を謹慎処分にせざるを得なくなって……
まぁ、現実の暴力団云々だと、対策法のやり方とかで、っていうのは効果があるしどんどん弱体化させろ! と思うんだけど、フィクションの中で、相手が滅茶苦茶に嫌な奴なのに、その法律を盾に追い込んできたらムカつくよね(笑) 特に、読者としては朔の側の視点で見ている上に、黒幕がド外道だから余計に。そんな中で、作中、どんどん距離が離れていっているように感じた朔の危機を白が救った場面は熱かった。しかも、その場面への伏線が1巻の話の終結のさせ方にあったとか、エピソードとしては別だけど、積み重ねになっている、というのもいい。あとがきで、「2巻のことなんて、全く考えていなかった」とあるけど、この辺りくらいはどこかで使えると考えていたんじゃないか? と勘繰ってしまう。
先に書いたように、前作と比べてラブコメ要素とかが強くなり、「軽くなった」感はあるんだけど、その分、気楽に読めるようになったと思うし、その上で、物語の筋の部分は前作同様に貫かれている。面白かった。

No.4380


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