(書評)自殺するには向かない季節

著者:海老名龍人



永瀬は通学途中のある朝、同じクラスの生徒・雨宮が列車に飛び込むところに遭遇してしまう。なぜ死を選ぶのか? 理由が思いつかない彼は、友人である深井からあるカプセルを手渡される。それは、タイムスリップを起こすことが出来るという。半信半疑のまま服用した永瀬は、2週間前にタイムスリップしていて……
第6回講談社ラノベ大賞・大賞受賞作。
何というか、SF的な要素とか、そういうものは含んでいるのだけど、登場人物たちの抱えている闇というか、そういうものが生々しい。それをくっきりと切り取った話と言える。
タイムスリップした先で出会った雨宮。彼女は、常に「死ぬ方法」を抱えている少女。そして、主人公は、それを「手伝う」ことで、彼女の死を防ごうとする。
母子家庭で育ち、母には再婚話も持ち上がっている雨宮。しかし、だからと言って虐待を受けているわけでも何でもない。そして、家族になるべく迷惑をかけない形で、と願っている。なぜ、そこまで死を願うのか?
という雨宮を止めようとする永瀬なのだけど、だからと言ってそんなに「一生懸命に」というわけではない。非行少女である姉。その姉を前に苛立つ両親。そんなギスギスした家庭環境を抱える中での逃避的な意味もある。その結果、とりあえず当日、雨宮が「自殺した」日に自殺するのは防げそうになるのだけど……
「蝶は羽ばたかない」
深井が薬を渡したとき、最初に告げた言葉。しかし、それでも……
一人でいくら頑張っても、最終的には同じ結果になってしまう。ならば? 一度、失敗したからこその想い。そして、それが成就した結果、と思ったら……。こういうと何だけど、永瀬、雨宮的には希望なんだけど、この人物にとってどうだったのだろう? 絶望と救済がある意味、入れ替わっているというか……
何かいい話のように思えるけど、でも……。それも含めて、十代のときの何となくの絶望とか、そういうものが描かれている、と言えるのかな? と。

No.4383


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