(書評)屋上のテロリスト

著者:知念実希人



1945年、ポツダム宣言を受諾しなかった日本は、その後、社会主義の東と、資本主義の西へと分割された。それから70数年後、死に惹かれる少年・彰人は、学校の屋上で沙希と出会う。「バイトする気ない?」 自分の手伝いをすれば「殺してくれる」という彼女の誘いに応えた彰人だったが、彼女の仕組んだ壮大なテロ計画に巻き込まれていき……
「あなたは100回騙される!」と帯にはあるのだけど、これ、「騙される」要素あったかな? いや、つまらないとか、そういうことではなくて、ひっくり返しが物語の主題ではないから。
まぁ、作中でも書かれているのだけど、物語の舞台となる日本は統一前のドイツ。いや、むしろ、南北の朝鮮の方が正しいかな? 戦後の社会主義陣営と資本主義陣営が経済格差などが出来ているように、西日本に対し、東日本は経済的に苦境に陥っている。そして、その中で、東のトップには、開放路線に立つ、芳賀という人物が立つが、これまでトップをとってきた軍部は反発を覚えている。そして、そんなときに起きたのが沙希によるテロ……
物語は彰人、さらに、西側のトップである大統領・二階堂。そして、東の暴挙に対するデモに参加する青年・秀昭といった面々の視点で展開する。と言ってもメインは彰人と二階堂。沙希に「手伝って」から始まったそれがいきなりの銀行強盗、さらに、東側の軍上層部との折衝といきなり思わぬ形で振り回される彰人。しかも、当初は、東のスパイかと思ったものの、沙希自身はその東の軍上層部をも手玉に取って、東西、両陣営へのテロ宣言。彼女の目的は一体何なのか? そして、そんな中で、暴走し始める東の軍を巡って東のトップである芳賀と交渉を続けるも、そこに脅迫を受ける二階堂。両者の視点からテンポよく話が展開していくため、どんどん読み進めることが出来た。
自分自身が、学生時代、政治学などを専攻していたし、その後の政変とか、そういうのもいくつか見てきた。最近で言えば、韓国の朴槿恵大統領罷免とかは記憶に新しいところ。その中では綿密な準備とか、そういうのは確かに必要。でも、その一方で、「勢い」とでもいうべきものが必要というのも事実。沙希の行動は、ある意味、荒唐無稽なのだけど、でも、綿密な彼女のテロ計画によって、その「勢い」が高まって……という流れはリアリティもあるような……何とも不思議な感じがする。
ま、政治やら軍やらのトップがあまりにも簡単に高校生に振り回されるとか、いくらなんでも……って思うところがないではない。ただ、それは突っ込んじゃいけないんだろうな……

No.4384


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