(書評)キネマ探偵カレイドミステリー

著者:斜線堂有紀



「休学中の秀才・嗄井戸高久を大学へ連れ戻せ」 入学早々、いきなり留年の危機に瀕してしまった奈緒崎が、教授からの救済措置として提案されたのはそんなことだった。カフェ、劇場、居酒屋が連なる下北沢の自宅に引きこもり、映画ばかり見ている嗄井戸を前に打つ手がない奈緒崎。そんなとき、嗄井戸の家の近くの映画館『パラダイス座』が閉館することになって……
から始まる連作短編集。全4編収録。
第23回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞受賞作。
なんか、すごく手堅い話だな、という感じ。物語は、冒頭に書いたように、留年の危機に陥った奈緒崎が、大学へ連れ戻すために嗄井戸のもとへと通う。そして、その際に様々な事件に遭遇し、映画に纏わる蘊蓄などによって嗄井戸がその謎を解く……という話。一応、1編目から殺人事件は発生しているのだけど、雰囲気的には、日常の謎ミステリのような話が多く、比較的、軽めにまとめられている印象。
まぁ、一応、謎としてはそれぞれタイトルにも出ている映画に関係しているのだけど、どうなのだろう? 私は映画とかに全く無知なのだけど、1編目とかは、その題材となっている作品を知っていると、それだけでトリックがわかるんじゃないか、と思う。3編目も……
そんな中で面白かったのは2編目かな? 大学のテストの最中、奈緒崎と同学年の首席入学者が奇妙な行動を始めた。大声でチャップリン主演の『独裁者』の演説を開始。しかも、何か、微妙に本来のセリフとは異なっている。それが意味するものは……。まぁ、「何をしようとしたのか?」自体はそれ以外、考えられないだろう、とは思うものの、嗄井戸が言うようにいくらでも言い訳がきき、しかも、バレる可能性がこの上なく低い。そんな方法というのは上手い。
そして、そんな中での最終編。部屋へと引きこもっている嗄井戸の過去ともかかわってくるんだけど……
最終編だけ、事件そのものが重く、しかも、こう言っちゃ何だけど主人公の奈緒崎が言うように犯人が「頭のおかしい」存在でしかないために、物凄く話が浮いているように感じられてならない。新人賞受賞作ということで、ある程度、まとめないといけない、ということもあるだろうし、仕方がないことではあるのだけど。
「この作品ならでは」というような要素はないように思えるのだけど、テンポの良さとか、そういう部分ではまとまっている作品じゃないかと思う。

No.4388


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