(書評)ガーディアン

著者:薬丸岳



少し前まで荒れていた中学校。しかし、着任したばかりの秋葉の目に映るのは長期の不登校生徒がいる以外は平和な学校の姿。実は、その学校の治安は、「ガーディアン」という特命の自警団によって成り立っていた。秋葉は、その「ガーディアン」について調べようとするのだが……
著者の最近の作品って、エンタメ方向に比重を置いた作品と、社会問題について比重を置いた作品に分類できるように思う。そして、本書は、SNSを通じた人間関係とか、そういうテーマは内包しているものの、どちらかというと、エンタメ方向に比重が置かれているように思う。
冒頭に書いた粗筋では、早い段階で秋葉がガーディアンの存在に感づき、行動を開始するように思えるんじゃないかと思うのだが、それは中盤に入ってから。そこまでは、秋葉を始めとして、生徒たちの視点でつづられる。一見、平和な学園。しかし、それぞれの中でトラブルの芽は生まれており、さらに、匿名の自警団・ガーディアンに対する信頼と恐れも……
まぁ、テーマとしては理解できる。教師という存在だけでは、子供間のトラブルを解決することは難しい。だからこそ、非合法なことも含めて解決に動く存在が現れる。そして、だからこそ、それを隠すために制裁を伴ったルールもまた……。そういう物語があっても良いとは思う。
ただ社会問題とか、司法の問題とかにかなり踏み込んだ形の作品が多い著者にしては、本作は随分と踏み込みが甘いというか何というか……。基本的に、ガーディアンって、問題の根源となる人物を脅迫することで問題を辞めさせているのだけど、そんなに簡単に屈するかなぁ? 秋葉がガーディアンの存在に気づくきっかけとなった問題児・八巻にしても、あまり掘り下げられていないだけに言われるほどの問題児と思えない。さらに言えば、終盤、先生がそれぞれ良い人っていうのも……。中学くらいのイジメとか、トラブルとかって、結構、悪どいよ? と……
これまで、司法とかの問題について、きれいごとだけでない部分とかをしっかりと描いてきた著者だからこそ、こういう不満を持つんだと思う。他の人だったら、ちょっと軽めの、そういう影の存在と、それを探る教師の攻防として割り切って楽しめたと思うから。
社会問題の掘り下げとか、そういうテーマ性はあまりなく、軽く読める作品、としては良いのかもしれない。

No.4390


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