(書評)近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係2

著者:久遠侑



雨宿りの中のキス。由梨子から気持ちを伝えられた健一だったが、共に暮らし始めた里奈への感情と交じり合い、返事をできないでいた。夏、そして、秋、里奈のいる季節を経る中、皆の関係は確実に変わっていき……
前作の感想で「何もない話」と書いたのだけど、その雰囲気は2巻目も健在。
冒頭に書いたように、由梨子からの告白を受けたものの、自分の気持ちの整理が出来ず、返事をしないままに過ごす健一。夏休みの日々、二学期の生活。里奈への想いはある。でも、一緒に暮らす生活。当初の、異物が入ってきた、という感じもなくなって、だんだんと文字通りの「家族」という印象に……
あとがきで著者が「細かな文章のニュアンスで全体の印象が大きく変わってしまうような作品」と書かれているように、何もない中での、ちょっとした出来事
。その中での心の揺れ動き、というのを徹底的に丁寧に切り取った作品、という風に言える。作中の時間軸としては約半年ほどになるのだけど、冒頭で書いたように、由梨子からの告白というイベントからの、しかし、淡々と続く日常がリアルさを感じる。自分の里奈への想いは、恋心なのか? それとも……。同じ部活の仲間が恋人として付き合い始めての比較。とにかく、由梨子を待たせていることの罪悪感。その中での結論は……
この作品の場合、どうやっても、魅力を伝えきれる自信がない。というのは、先に書いた著者の言葉の通り、ちょっとした言葉遣いとかに気を使って描かれた空気感というのが何よりものこの作品の魅力だから。ミステリー小説のように思わぬトリックが! とか、恋愛小説なんかのような泣ける結末とか、そういうのならば、何ともでも書ける。でも、この作品は実際に読んでもらわないと伝わらないからなぁ……。
正直なところ、2巻で完結してしまう、というのは勿体ない気がする。ただ、その一方で、このくらいの巻数だからこそ、誰かにも「面白いからおすすめ」と手軽にお勧めできる、っていうところもあるんだよな。
作品のクオリティは文句なしの出来。刊行からかなり経過して読んだ人間がいう台詞じゃないけど、ぜひ読んでほしい。

No.4392


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