(書評)鍵師ギドウ

著者:大門剛明



仕事も金もなく、ヤクザに追われる立場になってしまった孔太は人生に悲観し、ビルから飛び降りたところを、通りかかった女性・心晴に救われる。彼女の紹介で、谷中の鍵屋・野々村十六堂で住み込みで働くことになった。主人公である多聞に教えを請いながら過ごす日々。そんな多聞は、最強の錠前を開錠したという窃盗犯・鍵師ギドウを追っていて……
てっきり、読み始めるまで「ギドウ」っていうのが主人公側だと思っていたことをここに告白します!
それぞれ、繋がってはいるものの、エピソードとしては6つの連作短編形式の作品。鍵師は鍵を開けるだけじゃなくて……という形でトラブルと、その中での謎を解いていく形。そして、その中では、多聞が気にしている鍵師(窃盗犯)が関わっていることが多くて……
例えば、1編目。多聞のところ入ったのは、風呂に入っていたら、風呂の鍵が壊れ、閉じ込められてしまったので助けてほしい、という依頼。入浴中の若い女性、ということもあり早いこと解決し、失礼にならないように帰ろうと考える孔太だが、なぜか多聞は時間稼ぎのようなことばかりしている。スケベ心? と思ったが、実は……。この話で大体の方向性が分かった、っていうのは大きいかな? と。
そんな感じで、どちらかというと、多聞がマークしている窃盗犯を巡って、という話が多いのだけど、その中でちょっとほっこりしたのは三篇目。殺人犯が脱獄して……という状況は殺伐としているのだけど、その中で、交番勤務の巡査が手錠の鍵を紛失してしまった。容疑者候補は3人。一体、誰が? 意外性、というよりも、犯人のすごく健気で純真な様子が良かった。
そんなエピソードを重ねて、ギドウの正体を……となっていくのだけど……。正直、終盤のまとめ方はちょっと……って感じるところが多かった。
まず、冒頭で、孔太がヤクザに追われている、というのを書いた。そして、ヤクザに孔太は居場所を突き止められていて、大金を払えと脅されている状態だ、というのが作中、何度も描かれる。多聞たちに、自分の状況を言おうにも得ない。支払期限は迫る。そんな中でどうするのか……と思ったら、なんか、滅茶苦茶にご都合主義に解決って何やねん!!
さらに、そのギドウの正体。これは……これ自体はあっても良いのだけど……ある意味、作品の前提になる部分について嘘が書かれているのでビックリというよりも、「それはないだろう」的な想いを抱いてしまう。一応、全部の謎は解消されるのだけど……うーん……
なんか、変な感じの読後感が残った。

No.4403


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