(書評)明治あやかし新聞 怠惰な記者の裏稼業

著者:さとみ桜



江戸から東京へと名を変えて数年の明治9年。小新聞に載った記事が原因となり、幼馴染が奉公先を追い出されたことを知った香澄は、怒りのあまり、その新聞社へと抗議へ向かう。そこで出会ったのは怠惰な態度の記者・内藤久馬と、役者崩れという芝浦艶煙。二人は、記事を書くと共にある裏稼業をしていて……
第23回電撃小説大賞・銀賞受賞作。
なんというか……同じく電撃小説大賞を受賞した『キネマ探偵カレイドミステリー』(斜線堂有紀著)もそうなのだけど、初めからMW文庫での刊行を目指していたのかな? と思える内容。こんな言い方が誉め言葉なのかよくわからないけど、『このミス』大賞の隠し玉とかであってもおかしくない感じ。
物語は、全4編の連作短編形式。タイトルの通り、「あやかし」に纏わる物語。ただし、実際に怪異が出てくるわけではなく、そのような噂をばら撒いたり、はたまた、怪異を演出することにトラブルを解決する、という話。こうやって書いてみると、京極夏彦氏の『巷説百物語』シリーズっぽい。
例えば1編目。冒頭に書いたように香澄は、幼馴染が奉公先を追い出された原因が、久馬の記事だ、として新聞社へ行くのだけど、実は幼馴染の意見すら聞いていなかった。そして、実は、新聞記事を理由に追い出されるように仕向けていた。そして、さらに、その奉公先の主人を懲らしめるために……
凄く古典的なやり方ではあるんだけど、まだ、江戸時代の制度とか、そういうのが色濃く残っていた時代だからこそ、こういうアナログなやり方も十分に可能だし……というのを考えると、時代設定とかがしっかりとしているから、というのを感じる。
で、香澄視点で、艶煙らのひょうひょうとした説明とかが軽いトーンに思えるのだけど、よくよく読んでみると、結構しつこく、そして、徹底的に嫌がらせ(?)をしているのが印象的。華族という権力を笠に着て悪事を働く青年に、母の形見の髪飾りを奪われた、という少年の依頼を聴く2編目。策略で、髪飾りを奪い返して終わり、と思ったら、実はそのあともやっていて……の結末に大笑い。いや、第三者から見るから笑えるのだけど、よくよく考えると、かなりえげつないよ、これ。
で、この手の話のまとめとしてお約束のように、4編目で久馬の過去について触れられる。神隠しにあった千世という妹的な存在の女性。そして、久馬自身が捨てられた、という村の噂。その中の真実……
香澄じゃないけど、これまでのエピソードで語られた「嘘」は一生、腹に収めていなければならないものではない。ほとぼりが冷めたら、それをバラしても問題ないがないようなもの。しかし、久馬は自身についてのことで嘘をつきとおそうとし、それ故の苦しみを味わっている。それを何とかしたい……
この辺り、1編目の、幼馴染の気持ちなど考えずに動いた香澄との対称性とか、そういうのが活きているし、ハッピーエンドの読後感も気持ちがいい。
まぁ、3編目まででもう少し、久馬の影とかが出ていればよりよかったとは思うけど、それは仕方がないかな?

No.4405


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