(書評)Tの衝撃

著者:安生正



長野と群馬の県境付近で、自衛隊の搬送車が襲撃を受け、核燃料が奪われてしまう。自衛隊の陸上幕僚監部運用支援・情報部の溝口は、その襲撃犯の洗い出しを命じられる。しかも、超法規的措置をも辞さずに、という命令で。一方、襲撃があった同じころ、岐阜県の飛騨山中で大学教授らが乗った車が、土石流に巻き込まれる。その事故で唯一生き残った准教授・八神は何者かにつけ狙われるようになって……
最近(2016年6月時点)、毎週のように北朝鮮がミサイル発射とかをやらかしているから、そういう中で、作中で出てくるような計画も出てこないとも限らないかも……と思えたり……
物語は最初に書いたように、襲撃犯を調査する溝口。そして、何者かにつけ狙われる八神。その二つの観点で綴られる。
人一倍、遵法精神が強く、超法規的措置も辞さずに、という命令に不信感しか抱けない溝口。そして、その裏には何か、書く仕事があるに違いない、という直感に達するものの、しかし、やがて、それ故に組織からも裏切り者的な存在になっていく。一方で、八神は文字通り、何者かにつけ狙われる。
個人的な好みからすると、八神の側の物語が好きだったかな? 上司たる教授が荒らしの中、強行した山中行き。しかし、そこで起きた悲劇。教授は、何か自分に隠していたらしい。そして、不備がなかったはずの論文がボツになってしまった。それも関係があるのか?
まぁ、正直なところ、リアリティとか、そういうところだとちょっと……と思うところもある。いや、先に書いたように、北朝鮮とかが挑発行動を続け、東アジアの緊張が……というところで、こういう計画が持ち上がってもおかしくはないと思う。そこは良いのだ。気になるのは、だからと言って、自衛隊の搬送車が道中で堂々と襲われる。また、自衛隊上層部を狙って町中の病院でドンパチ。そちらの方が、流石にありえないだろう、という感じになってくる。
また、タイトルとか、そういうのも含めて、何となく、こういう方向で話が進んでいくのだろうな、というのが予想できてしまう、というのもちょっと問題かな。北朝鮮の動向とか、そういうのを書いたけど、北朝鮮の行動とかも、地震などのデータによって「これをやっていた」というのが明らかになった、というニュースが出ているわけだから、八神の研究がどう、何に引っかかったのか? とかも、そこから予測が出来てしまうし……。「T」をキーワードに引っ張るのは、ちょっと苦しいかな? と思えてしまう。
正直なところ、イマイチ、引き込まれなかったな、という印象。

No.4408


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