(書評)共犯レクイエム 公安外事五課

著者:麻見和史



強盗未遂で捜査中だった少年を何者かに殺されてしまった杉並署少年係の女性刑事・篠原早紀。そんな矢先、彼女は突如として公安外事5課への異動を命じられる。東欧の国・ベラジエフのスパイ監視に加わることとなった早紀だったが、課長の常川からは、指導役の女性刑事・風間律子がモグラかどうかを調査せよ、とも命じられて……
著者の警察作品というと雨宮塔子シリーズがあるけど、本作は公安モノ。その辺りの違いはあるのだけど、主人公は女性刑事。そして、それぞれ、他から異動してきたばかりの新人。その辺りは共通点が多いなぁ、とまず感じた。
物語は、冒頭に書いた通り、東欧のスパイと思われる人物の監視に加わるのだけど、同時に先輩刑事の身辺調査をする、という立場で進行。スパイと思われる男に張り付いて、監視して、しかし……と比較的、地味な展開。個人的に、あまり公安について詳しくないのだけど、公安刑事ってそんなにチームで捜査とかを行うんだっけ? とか、そんなことを思ってしまったのだけど、どうなんだろう? ただ、入りやすい、というのは間違いないのだけど。
ただ、そんな物語は中盤から急展開。初めて、自らの情報提供者にしたて挙げた女性の失踪。さらに、自分自身の部屋に仕掛けられた盗聴器。思わず逃げ出してしまう早紀だが、そこへ迫る自分の所属している係の刑事……。追う側だったはずの早紀が気づけば、追われる側に転じている恐怖感。そして、その末で知らされた自分の立ち位置。その辺りの転調がすさまじい。
その上でいうと、自分が過去に読んだ、公安モノの作品って、どちらかというと後味の悪いものが多いのだけど、この作品に関しては、そういうところはなかった。先に書いたように、恐怖感、絶望感みたいなものを感じる箇所はあるのだけど、ちゃんとほっとできる、安心できる形でまとまるから。ただ、その安心感などを与えつつも、よく言われる「目的のためには手段を得選ばない」公安らしいやり口を描いているあたりが特徴なのかな? と感じる。
正直なところ、物語のカギを握るある人物が獅子身中の虫について知っているのに敢えてそれをずっと言わず、話を引き延ばしている、と思える部分があるとか、気になる個所もあったのは確か。ただ、先に書いた決して後味が悪くならない作りとか、著者らしさを出しながらの公安モノに仕上がっているな、というのは強く感じられた。

No.4409

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