(書評)せきゆちゃん(嫁)

著者:氷高悠



中学3年のとき、親父が蒸発し、貧乏暮らし真っ只中の灯也と妹の明莉。やぶれかぶれで行ったダウジングの結果、庭から掘り出したのは美少女の死体……ではなくて、油天国「ユデン」出身の油天使・せきゆちゃん。身も心も引火しやすい彼女を、廃油の危機から救うため、せきゆちゃんと結婚することにしたのだが……
色々と擬人化、っていうのはあるけど、石油……。ある意味、見事な一発芸。
こういう言い方をすると何だけど、話の流れそのものは、結構、テンプレなラブコメもののそれ。庭から彼女を掘り起こす。しかし、人間と天使は一緒に入てはいけない、という事情があるらしい。だから、結婚して関係者になってしまえばいい。そして、ちょっとしたところで引火してしまう。思わず石油を出すことがある。そんなせきゆちゃんとの日常。ところが、やっぱり別離の時が? そんなのは嫌だ!
……なんか、どこかで聞いたような流れでしょ? そういう意味でも、お約束の流れの中で展開する話だ、と思うわけ。
ただ、その中でのキャラクターのとんがり方が見事。
見た目が思い切りアラブの石油王っぽい風貌の灯也の友人・アブラダ。貧乏暮らしの中、すっかり金の亡者になり果てている妹・明莉。主人公のアルバイト先の後輩で、オイルをこよなく愛する詩恵里。財閥のお嬢様だけど、対人関係が作れず、お金を配って回っている美萌。アブラダが一番、まともに見えるくらいに(てか、実際、彼は普通にまともな人だけど)、他の面々がおかしくて、そのやりとりで話を進めているように思う。特に、妹ちゃんの、完全にヒロインの座を目指していないだろう外道っぷりはかなりのもの。
正直なところ、長く続くシリーズになると思えないのだけど(ある意味、出オチ枠のキャラが多いわけだし)、その分、濃い面々に振り切って話をまとめてきた、という感じがする。

No.4410


にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0