(書評)警視庁捜査二課・郷間綾香 ハイブリッド・セオリー

著者:梶永正史



匿名での情報提供で語られたのは、現職の墨田区長に対する汚職疑惑。相談者は区長の経営する消費者金融に騙され、自らの工場を喪ったという。とはいえ、明らかな情報不足で捜査には乗り出せない。そんなとき、その情報提供者と同じようなことを述べた男が区長を襲撃する、という事件が発生する。何かがあるかもしれない。綾香は、区長の周辺を探るが……
シリーズ第3長編。今作は、いきなり文庫書下ろし、という形での刊行。
なんというか、まず思ったのは、かなり込み入った物語だなぁ、ということだったりする。冒頭に書いたような経緯で、墨田区長を調べ始めた綾香たち。確かに、区長の実家では金融業を営んでいる。しかし、実際の経営は、先代の片腕として活躍していた山田という男が一手に担っており、最近はむしろ疎遠になっている。そんな山田を張っていると振り込め詐欺グループとの繋がりが見え隠れし始めて……
振り込め詐欺グループを張っている女性刑事が関わっている男の正体。そもそも、きっかけとなった最初の通報者は誰だったのか? それぞれ行方をくらませてしまった彼らの正体は? そして、それぞれがどういう役割を持っているのか? 
詐欺グループともつながっている山田という男が様々な問題の根源である、というゴールは見えていても、何かしっくりこない気持ち悪さ。そんなところで話が進んだ末に明らかになる、壮大な仕掛け、というのが非常に緻密かつ大胆ですっかり騙された。いや、プロローグで、そういう何か仕掛けをしている、というのは示唆されているんだけど、それでも……。勿論、その壮大な仕掛けをちょっとしたミスから明らかにする綾香も見事なのだけど。
まぁ、細かいところを言うと、振り込め詐欺捜査に加わっている地元の署の刑事の勘違いは流石に、それを勘違いするか? と思うところがあるし、また、山田にしても、これだけ派手に動いていてここまで逃げ切れるものだろうか? と思うところはある。すべてを取り巻く仕掛けが見事だからこそ、その周辺がそこまでいくかなぁ? と思えたりする。それも含めて「思い込み」というこの作品のテーマになっているのだとは思うが。
でも、3作目も安定の完成度。面白かった。

No.4411

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0