(書評)ジャナ研の憂鬱な事件簿

著者;酒井田寛太郎



他人の気持ちを考えずに秘密を暴く、という行動をしていた工藤啓介は、海新高校ジャーナリズム研究会(ジャナ研)で、他人と距離を置いた日々を送っていた。そんなある日、校内でも有名な美人であり、お嬢様でもある先輩・白鳥真冬と出会って……
第11回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。
え~っと、こういう言い方をしちゃうと何だけど、この作品の主人公の設定を見たとき、最初に思ったのが瀬川コウ氏の『謎好き乙女』シリーズっぽいな、ということ。謎を解く、その快感に取りつかれて他人の気持ちを顧みず、結果、そのことが後悔へと転じてしまった、という部分が似ているだけに。ただ、本作の方がライトな印象はある。
物語は短編形式で、4編が収められている。
啓介が真冬と出会う『ノート消失事件』。大量のノートを抱えて困っている真冬を見つけ、荷物を運ぶ手伝いをした啓介。ところが、いざ、教室についてみるとノートの数が足りない。教師はノートを渡すとき、数は確認してある、と言っていたが……? まぁ、犯人は登場人物の少なさからあっけなく判明する。そして、その動機……。確かに、どんな立場の人間だって「人間だよね」というところはある。と、同時に、この間違いって授業中、誰も気づかなかったのだろうか? 教科書を開いて授業を聞いていれば……って気がしてしまうのだけど……
話として面白かったのは2編目『聞こえない声を聞かせて』。モデルとして芸能活動をするユリという少女の机から盗聴器が発見された。仕掛けたのは、怪我をして松葉杖をついている少女。なぜ、彼女は、盗聴器を仕掛けたのか? ユリが盗聴器を発見した経緯、そして、芸能人のスキャンダルなどは売れる、という現実。そういうものが入り組んでいるのだけど……。学校という狭い人間関係の中で、そういうところが気になる、という動機は非常に納得できるものだった。
そして、4編目で、学校を退学した真冬の、かつてのモデル仲間について……となるのだけど……
真相とか、その辺については何も言及しません(笑) そうではなくて、その物語へと至るまでの話の流れ方について。
1編目から3編目のエピソードで語られる様々なことが、しっかりと4編目のエピソードの前段階になっているのが丁寧で好感の持てるところ。先に書いたけど、ユリがモデルをやっている、というところから、そういえば真冬も……となり、その友達が……とも話が広がる。はたまた、各エピソードの真相とかもそう。その分、わかりやすくなっている、とも言えるのだろうけど、唐突さを感じさせないのは上手い。
ビックリするようなトリックとか、そういうものはないけど、丁寧に作られたミステリ作品だと思う。
……そういえば、本作。各エピソードのタイトルページと、エピローグ部分しかイラストがないな……

No.4414

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