(書評)ありえない青と、終わらない春

著者:清水苺



春、通学途上で迷子の犬を発見したことで、石崎海は前田きららと出会った。「あの時選択しなかった運命を、選択するために」タイムリープしてきたというきららに誘われ、彼女の誕生パーティーに参加するのだが、彼女には婚約者がおり、それは、友人の卓也で……
うーん……Twitter等でやりとりをさせて頂いている某氏が、ズタボロに感想を書いていたので逆に気になって読んでしまった本書(笑) 確かに、読んでいて色々と気になる箇所があったのは確か。まぁ、細かいところでもツッコミどころはあるのだけど……とりあえず、それはさておいて感想を書くことにする。
とりあえず、長所と言える部分を言うと、主人公がヒロインであるきららに惹かれていく理由。そこについては感情移入できたかな? という部分。良くも悪くも奔放な性格。振り回されつつも、しかし、ちゃんと気遣ってくれる。付き合っていて疲れるとは思うけど、でも……という気持ちはわからないではない。そして、終盤、きららの苦境を知りつつも、しかし、何もできない苦しさ、悔しさを込めて「あきらめろ」っていうのも「女々しい」っちゃあそうなのだけど、現実門としてそう言わざるを得ない、っていうのも理解できた。その辺は、悪いとは思わない。
ただ……
なんていうか、根本的な物語の構成がおかしくないか? と思わざるを得ない。
物語の中心となるのは、海ときらら、そして卓也という三角関係。海は卓也と友人で、きららと卓也は婚約者。そして、卓也は文武両道なイケメンで、海にとって絶対にかなわない相手でもある。……という設定なのだけど、友人関係だとか、そういうのが「卓也とは友達だ」というような一言で簡単に説明されるだけ。つまり、普段の海と卓也の関係性っていうのがわからない。その状況で卓也がするのは、海がきららにプレゼントしたぬいぐるみを、公衆の面前で捨てる、という行為。それを見て、海は、「やはり、俺ときららは結ばれることはない」と絶望するのだけど、読者としては置いてけぼり。だって、卓也は嫌な奴、としか思えないし、何がどう自分にはかなわないのかサッパリわからないのだから。逆に終盤、卓也が海たちを見下しているような発言をするけど、海とは裏腹に読者としては「最初から知っていた」という感じで、どうにも海の感情と読者の感情にギャップが生じてしまった感じがある。
その一方で、前半、大きな存在感を示しているのが、海の幼馴染である麗衣。見目麗しい美少女だけど、毒舌というか、下品な物言いというか、とにかく口が悪いことで周囲をドン引きさせる存在。そんな彼女は、実は海が好き。つまり、こちらでも、海、きらら、麗衣で三角関係が生じている。……が、前半、かなりの分量を割いて彼女を描いたのに、後半、全く出番がなくなってしまう。……ぶっちゃけ、何のために出てきたの?
まぁ、正直、自分自身は、「物語を綴る」というのが全くできない人間なので「何を偉そうに」と言われるかもしれないけど、でも、こんなに中途半端にキャラクターを書くなら、麗衣と卓也、登場人物をどちらか一人に絞って、海との関係とかを掘り下げた方が良いんじゃないか、と思える。
他にも、自分の選んだ道しかきららには認めない、という彼女の父親は良いとして、なぜ、きららが父親に、内心は嫌だと思いつつも従順に従うのかもイマイチよくわからないし……(あるとすれば、反すると牢屋に入れられるから、だろうか? しかし、それはそれで犯罪だろ、とツッコミを入れたくなってしまう) 上に書いた、卓也と麗衣は典型例なのだけど、きららについても肝心なところが置いてけぼり。
細かいところにも「?」と思うところはあるのだけど、主人公以外のキャラクターの描写が徹底的に欠けており、故になんでこう動くの? という部分に納得が出来なかった。正直、完成度は低い作品だと思う。

No.4417

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