(書評)失われた地図

著者:恩田陸



錦糸町、川崎、上野、大阪、呉、六本木……。日本各地の旧軍都に発生する「裂け目」。そこに生きた人々の記憶が形を成し、現代によみがえる。その「裂け目」を封じ、記憶の化身と戦う力を持った鮎観と遼平。愛し合い結婚し、そして、息子・俊平を生んだのだが……
直木賞受賞後第一作という宣伝文句がついているけど、良くも悪くも「いつもの恩田陸」という印象。
とにかく、まず面食らうのは、設定とかそういうものが全く説明されないままに物語が始まるところ。自分はどのような存在で、一緒にいる面々とはどういう関係性で、というような説明がなくいきなり、既に作品設定を知っていることが前提になっているかのように物語が開始される。勿論、そこで描かれるのは、いきなり「裂け目」から何者かが出てきて、それとの戦いが始まって……。そういう意味では置いてけぼり感を感じるところがある。しかも、話的にあまりまとまらずに最後のエピソードが終わってしまった、という感じも残るし。
でも、それが著者なんだよな、というのを感じる程度には、著者の作品を追いかけているつもり(笑)
その上でいうなら、他の作品と共通するテーマ性だろうか。比較的、最近読んだ著者の作品である『タマゴマジック』、『EPITAPF東京』。これらの作品では「街、土地の意思」というような題材が出てくるわけだが、この作品の裂け目、というのもそこと繋がるものを感じる。過去、その場所にあった施設、歴史。そういうものが、裂け目として現れる兆候となり、もちろん、そこから現れる記憶の化身「グンカ」もそれにまつわるモノ。歴史、過去の経験がその人間を作るのと同じように、土地の歴史が土地の、街の意思を形成する。そして、「グンカ」も……
そんなことを真面目に考えたのだけど、序盤はその設定に面食らったのだけど、逆に後半のエピソードに入ってから、ある意味、吹っ切れてギャグになったんじゃないか、というノリになってきて楽しくなってきた。4編目、呉を舞台にしたエピソードなんて、アレが出てきちゃうし(笑)
多分、『蜜蜂と遠雷』を読んで、そういう作品を期待すると「あれ?」って感じになると思う。ぶっちゃけ、Amazonとかのレビュー見ていると、そういうのを強く感じる。でも、著者って、こんな作家なんだよな……と(笑)

No.4419

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