(書評)翼がなくても

著者:中山七里



陸上200M走でオリンピックを狙う沙良を襲った悲劇。交通事故に巻き込まれ、左足を喪うことに。しかも、事故の加害者は幼馴染の青年・泰輔。事故後、何の謝罪もない泰輔の一家。アスリート生命を失った沙良はやりきれなさを覚えるのだが、そんな泰輔が何者かに殺害されて……
という風に書くと、泰輔を殺したのが誰か? というようなミステリみたいに感じると思う。実際、そのような部分がないではないのだけど、主軸となるのは、片足を失って、それでも短距離走者として活きようとする沙良という部分のように思う。
高校を卒業し、実業団チームへと入社した沙良。仕事をしている、とは言え、それは午前だけ。午後からは、トレーニングに励み、成績も伸びてきた。このままいけば十分に五輪を狙える。そんな矢先の事故。走ることしかできない自分がそれを失った。運動部はやめざるを得ず、会社内での居場所もない。そんなとき、パラリンピックという世界を知って……
オリンピックの出場、活躍は日本でも多く取り上げられるけど、パラリンピックでは……という現状。一方で、パラリンピックもオリンピックと同じように厳しい基準タイムが定められており、それをクリアするにはオリンピック選手がするような、いや、それ以上に金銭的な負担がかかってしまう現実……
そのような中で、会社を辞め、競技用の義足を手にし、何が何でも、で食らいついていく沙良。その姿はなかなか印象的。
しかし、警察は動機、そして、会社を辞めて、という彼女の金遣いから沙良をマークするのだが……
正直なところ、事故の加害者である泰輔が事故担当の弁護士として雇ったのが御子柴、という時点で著者の作品を読んできた身としては何となくカラクリが読めてしまった。それに、なのだが、金の動きとかって明らかになるはずなのだから、そうするとこの事故のカラクリについて保険会社とか、警察は感づかないものなのかな? という気がしてしまう。実際、これまた別会社の作品に出ている刑事・犬養は真相に迫ったわけだし……
こういう言い方はなにだけど、変にミステリにしないで、ストレートに、足を失ったアスリートがパラリンピックを目指すスポーツもの、でもよかったような気がしないでもない。ミステリとしてのカラクリがわかりやすい上に、そう上手くいくかな? というのを強く感じてしまっただけに……

No.4423

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